私立中高進学通信
2015年8月号
校長が語る 思春期の伸ばし方
獨協埼玉中学校
自ら信じる価値観を
自分の力で確立させる

体育祭、文化祭などの行事は生徒が主体的に企画・運営します。
生徒の自主性を尊重することが子どもの自立と成長につながります。
揺れ動きながら成長する時期

1949年青森県青森市出身。早稲田大学大学院文学研究科修士課程修了。東京の私立高校国語科教師を経て、獨協学園・獨協埼玉高校国語科教諭になる。2001年、同校の中学開設とともに中等部主任となり、現在、同中学高等学校の5代目校長を務める。
――成長過程における思春期をどのような時期と捉えていますか。
中高の13〜18歳頃は、子どもが感傷的になったり、神経質になったりしやすい時期です。精神的に不安定な時期ともいえます。しかし、私は「不安定」という、ネガティブな言葉はあまり使いたくないと思っていて、「揺れ動く時代」という言い方をするようにしています。自分の価値観がまだ確立されず、日によってコロコロ変わり、揺れ動いている時期ということです。
しかし、それは見方を変えれば、可能性を秘めている時期ともいえます。想像力にせよ、判断力にせよ、まだ固定化されていないのですから、大きな可能性を含んでいるのです。そのことを、周囲の大人が理解して見守る必要があります。
――子どもへの接し方では、どのような点に配慮すべきですか。
子ども自身が持っている可能性をいかに潰さないかということに尽きます。この時期、身近な大人が自分の価値観を押しつけてしまうと、子どもが自分で創り上げようとしている価値観が操作されてしまう恐れがあります。これは非常に怖いことです。子ども自身に備わった力が最大限に発揮できるように、大人が邪魔をしないことが大切です。
学校の役割は「第三の大人」になること
――子どもの成長のために、学校が果たす役割とは何でしょうか。
私は、子どもの成長をサポートする大人には3つのタイプがあり、そのどれもが必要な存在だと考えています。「第一の大人」は、子どもの直近の幸せのために尽くす大人です。目の前の子どもの欲求を満たしてあげようと、すぐに物を買い与えたりする大人、すなわち、祖父母のような存在のことです。
「第二の大人」は、もう少し先の将来までを見据えて、子どもの幸せのために尽くす大人、すなわち、父母のことです。子どもがどこの大学に入れるか、どんな仕事に就けるか、そのために今何をしてやればいいのかということに心を砕く存在です。
そして、「第三の大人」は、もっと遠い将来を見据え、子どもを生涯にわたって真っ当に、ノーマルに生きていける社会人に教育するという役割を担っています。それが、学校であり、教員であると考えています。
――「第三の大人」が行う教育とは、具体的にどのようなものでしょうか。
例えば、学校から家庭に配付するプリントを子どもが親にきちんと手渡さないという問題がよく起こります。保護者から、「郵送にしてもらえないか」といった要望も出てきますが、私は、それには絶対に応えません。大切な手紙を忘れずに親に渡すという責任を、子ども自身に自覚させることが重要だからです。社会人になって、重要書類を上司に渡すのを忘れたら一大事ですよね。学校では、そうならないような練習をしているのです。
社会のルールやマナーが普通に守れて、職場や家庭で困らない大人。そういう「ノーマルな社会人」になれるように教育するのが、学校の役割だといえます。
今、多くの学校が保護者のニーズに応えることに執心しているように思えます。本校では、親や祖父母が担えない「第三の大人」の役割を果たすことに徹したいと考えています。
子どもの人生に過度に介入しない
子育てのアドバイス
- 気持ちが揺れ動く時期であることを受け止める
- 親の価値観を押しつけない
- 「無条件の愛情」を注ぐ
――家庭における思春期の子育てのアドバイスをいただけますか。
ひとつは、価値観の問題も含めて、子どもの人生に親が介入しすぎないことです。過度の介入は子どもを追い詰めます。親が子どもに自分の思い通りの道を歩ませようとすると、子どもはその期待に応えられているか心配になり、親の顔色をうかがうようになります。親が厳しいケースほど、子どもは萎縮し、自分の理想を思い描けなくなるのです。そして、将来、つまずいたとき、失敗を親の責任にし、親を恨むことでしょう。つまり、子ども自身の望むことを、その意志に従ってやらせてあげることが重要だということです。
もうひとつは、子どもに「条件付きの愛情」ではなく、「無条件の愛情」を注いでほしいということです。例えば、運動の得意な子どもの保護者が「このがんばりを勉強のほうでも発揮してもらいたい」とこぼすことがあります。これは「勉強がよくできなければ愛せない」と遠回しに言っているようなものです。子どもはそれを敏感に感じ取ります。勉強ができてもできなくても、ありのままのわが子を愛してあげてください。
学校は子どもにとって「楽しい場所」であるべき

「学校は楽しくなければならない」というのが持論という柳町先生。「規則でがんじがらめにし、生徒自身に考えさせる余裕のない教育は、生徒の全人的発育を妨げる」と強調します。
同校では、生徒が先生や友達と話しやすい雰囲気作りに努め、部活動も実績偏重ではなく、生徒が伸び伸びと楽しめる活動と位置づけています。学校生活を楽しめる心のゆとりが、想像力や判断力を養い、感性を磨くことにつながっていくのです。
(この記事は『私立中高進学通信2015年8月号』に掲載しました。)
獨協埼玉中学校
〒343-0037 埼玉県越谷市恩間新田寺前316
TEL:048-977-5441
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