私立中高進学通信
2015年7月号
校長が語る 思春期の伸ばし方
聖望学園中学校
未来の道を拓くヒントは
自分の可能性をあきらめないこと

自分はダメだと思ってしまう生徒に寄り添いたい

1963年生まれ。平成元年、日本ルーテル神学大学神学部神学科卒業、米・コンコーディア大学卒業。同大職員として勤務。9・11の余波でオフィスが閉鎖し、その後、青山学院大学大学院で修士号を取得、ルーテル学院大学非常勤講師を経て、2002年より聖望学園に勤務。2007年より現職。
――思春期の課題をどのように捉えていらっしゃいますか。
自分の存在をあきらめないこと、自分自身の可能性を摘んでしまわないことだと思います。生徒は「これは無理」「私にはできない」と自ら囲いを作り、越えようとしないことがあります。でも、あきらめないでほしいのです。
私がアメリカに留学していた頃のことです。授業についていくだけで精いっぱいの毎日でした。朝6時に起きて大学へ行き、夕方帰宅して仮眠をとってからさらに勉強をする、そんな生活をしたのです。
授業のグループ学習では歓迎されず劣等感だらけでした。けれども、勉強を続けて成績が上がってくると「一緒に勉強しよう」「ノートを貸して」とみんなが声をかけてくるのです。努力して結果を出せば評価されることを知り、自信がつきました。
同時に、自分の中高時代を振り返って気付きました。私は自分なりの勉強の仕方を工夫してきませんでした。周囲の評価に惑わされ、もやもやと揺れている自分がいたことを思い出したのです。
子どもの頃は勉強が苦手で、両親や兄は「こうやって勉強しなさい」と教えてくれるのですが、うまくいかないのです。いま考えればやり方が合っていないだけだったのでしょうが、当時は「こんなに家族が教えてくれるのに、できない自分はなんてダメなんだ」と思い込んでいました。
紆余曲折を経て教員という仕事に就くことになったのは、かつての私と同じような気持ちでいる生徒に寄り添い「自分の力を信じてあきらめなければ、活かせる道は必ずある」と伝えるためではないかと思っています。
その時々を生きれば試練がチャンスに変わる
――自分の道を見つけるにはどのようにしたらよいのでしょうか。
その時々に起きることを経験しながら生きていくことではないでしょうか。
私は成し遂げたい確固たる目標があって人生の階段を上ってきたわけではありません。誰かに声をかけてもらったり、助けてもらったりしながら生きてきました。その間にはとてもショックなことが起きて「前に進めない」と思ったり、大きな役割を任せられて「自分にできるだろうか」と不安になったりすることがたびたびありました。
しかし聖書にあるように「神様はその人が乗り越えられない試練は与えない」のです。懸命に取り組めば、試練と思っていた壁は次に続く扉であり、その先に道が開けてくるのです。
子どもを多面的に捉えること
思春期の課題
- 自分をあきらめないこと
- その時々を一生懸命生きる
- 6年間で興味や関心を持てる“種”を見つけること
――子どもたちのあきらめずに生きようとする気持ちを育てるには何が必要だとお考えですか。
生徒の可能性を伸ばすには、一人ひとりにさまざまなアプローチが必要です。1つの決まったやり方ではなく、多様な方法があると教員や学校が意識しながら接することが大事だと考えています。
そしてさまざまな経験ができる環境を作ることです。勉強に限らず「これは面白い!」「もっと知りたい」という気づきを得られれば、自分が興味を持てるものがわかります。気づきを得た人間のエネルギーは計り知れないものがあります。
学校は生徒を何かにつくり上げる「装置」ではありません。卒業後の人生の中で、「私はいま、こんなふうに生きています」と自信を持って言えるような、生き方の “種” をたくさん拾うことができる場所が学校ではないでしょうか。私たち教員はその種をまき、生徒にできるだけ多くの刺激を与える存在でありたいと思います。
多様性と調和を学ぶ学校行事

「この社会は、いろいろな人がいて、いろいろな形があり、発想があっていい。けれども独りよがりではなく調和を取ることの大切さを学んでほしい」と話す関校長先生。その経験は文化祭(左)や修学旅行(上)などの学校行事を通して生徒たちに伝わっていきます。長崎を訪ねる修学旅行(中2)では二十六聖人が殉教した地に建つ「日本二十六聖人記念館」を訪れ、キリスト教の歴史を学びます。日常生活のルールや社会性は礼拝や聖書の時間を通して学びます。「有名な『十戒』は、幸せに暮らしていくために皆で決まり事を守っていこうという神様との約束です。聖書があることで理解しやすくなるのです」(関校長先生)
(この記事は『私立中高進学通信2015年7月号』に掲載しました。)
聖望学園中学校
〒357-0006 埼玉県飯能市中山292
TEL:042-973-1500
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