私立中高進学通信
2015年7月号
未来を生き抜く学力のつけかた
トキワ松学園中学校
知的好奇心を呼び覚ます「探究女子」教育で
社会と人生の変化に対応できる素養を身につける

本の基礎情報の見方を学んだあとで、
図書室の蔵書の中から課題となる本を実際に探し出す『図書室オリエンテーリング』。
来年、創立100周年を迎える同校は、情報にあふれるこの時代に確かな判断力と発信力を持つ人間を育てることを目的に、多角的な教育活動を展開しています。その柱となるのが「思考力教育」を中心とした「5教育」で、調べスキル・創造性・協働力・プレゼン力・国際感覚の5つの力を伸ばします。同校が伝統的に進めてきた調べ学習・課題解決型学習を基礎に、活字を通して正確な情報を選び取る経験を積み重ね、5つの力を伸ばしていく取り組みを強化しています。
図書室を利用しての授業は年間240時間。各教科で積極的に図書資料を用いた授業が行われ、現代の若者に不足しがちな活字力を養い、教養と知識を高めるのがねらいです。
活字を読み解く力が次の扉を開く
同校の生徒たちが中学3年間で読む冊数は1人平均で100冊。各教科の中でも課題図書が出されるなど、読書の習慣がなかった生徒も無理なく活字に親しむ工夫を凝らしています。図書室には専任の司書教諭が常駐で2人いるため、気軽に資料について相談できる環境です。授業に関連する図書は常に目につきやすい位置に配置され、生徒たちが自ら選べるようにと配慮を怠りません。
こうした環境の中で養われた活字力は、母国語の力を育むだけでなく、生徒たちの目を広い世界へといざなってくれます。中2で取り組む社会科の歴史新聞は、まず普通の新聞が「主観記事」と「客観記事」に分かれることを学習してから、新聞を作ります。日本の人物を選んだ場合は同時代の世界の出来事を、世界の人物を選んだ場合はその時、日本はどのような時代だったのかをトピックとして入れるのがルールです。こうした新聞作りを通して、生徒たちが主観と客観、日本と世界をリンクして考えられるように導いています。
また、英語の『グローバル・スタディーズ』の授業では日本語の新聞を切り抜き、内容の要約を英語で書きます。日頃から新聞への関心を高めて英語で発信することを学び、活字を媒介に多面的に学ぶことで、生徒たちは知的好奇心を養い、さまざまなトピックを通して世界へと目を向けていくようになるのです。
「ネット社会の情報は生徒たちにも大きく影響を与えます。信頼度の高い資料を自分で選び、判断できる力を養うことは、社会を生きるうえで重要なことだと考えています。人生の中でいろいろな変化を経験するのが女性ですから、さまざまな対応力を身につけてもらいたいと願っています」(金谷三枝子校長先生)
未来を生き抜く「調べスキル」
同校がめざしているのは、情報の信憑性を判断できる力を身につけることですが、その足がかりとなるのが「調べスキル」です。本を調べ、利用するためには、本の索引と目次を使いこなせるようになること、また、本の基本情報がわかる奥付の見方を理解する必要があります。このため、図書学習の導入となる中1では、課題となる本を探し出し、本の中から必要な情報を見つけ出す『図書室オリエンテーリング』を行っています。生徒一人ひとりに異なる課題を出すため、みな真剣に本探しに奔走します。生徒たちは、5冊の本を探し当てる中で、自然と本の情報の見方を身につけていきます。
未来を生き抜く「国際力」

これからの時代、英語はただ話せるだけでなく、話す内容も重要になります。そうした未来を見据えて、同校では中身のあるコミュニケーションを取れる英語力の育成に努めています。中学では人前で身近な話題について話せるようにしていきます。自己紹介の後は、友達を他の人に紹介する「他者紹介」にチャレンジ。どんなことが好きなのか、家ではどのように過ごしているのかなどをインタビューして英語で紹介文を作ります。同校のある目黒区は、各国大使館が多く建ち並ぶ区でもあり、そんな土地柄を活かして、外国人ゲストを迎えての交流学習も行っています。英語圏でない国の人々を積極的に招き、英語で交流する機会を設けています。普段はなかなか触れることの少ない国の文化について知ることは、生徒たちのグローバルな視野を広げるきっかけとなっています。
未来を生き抜く「探究女子」

探究心はその後に進む大学はもちろん、社会に出てからも役立ちます。探究心が育っていれば、何事にも積極的に取り組めるようになると考えています。柱としている「5教育」では、身につける5つの力をそれぞれリンクさせて総合的な力にするように6年間のプログラムが組まれているのが同校の教育の特徴です。企業とのタイアップにより、実際の商品開発に生徒が関わるなど、学年が上がるにつれて働くことに直結するような総合学習も行われています。学習を通して職業観が身につくことで、生徒たちは明確な進路を見つけやすくなったといいます。
(この記事は『私立中高進学通信2015年7月号』に掲載しました。)
トキワ松学園中学校
〒152-0003 東京都目黒区碑文谷4-17-16
TEL:03-3713-8161
進学通信掲載情報

紹介する学校
- なぜ学ぶのかを理解させ社会でのスキルを学び選択肢に広がりを横浜富士見丘学園中学校
- 自ら考え、自ら調べ自ら行動する人間の育成 21世紀を生きる土台づくりの6年間佐野日本大学中等教育学校
- 入学間もない生徒たちの研修に「インプロ」を導入二松学舎大学附属柏中学校
- 時間管理能力を養い学校生活を楽しみ難関大学現役合格へ東京都市大学等々力中学校
- 自分の可能性を世界で開花させる2カ国の卒業資格文化学園大学杉並中学校
- 感動と発見をみんなで共有!卒業論文発表瀧野川女子学園中学校
- すべてを自分たちの手で!自立した女性を育成する学校行事東京家政学院中学校
- 相互通行型授業 互いの意見を共有し新しい自分を発見する三田国際学園中学校
- 先生と保護者が同じスタンスで接することで安心できる環境を作る日本大学第一中学校
- 自ら考え発信する「21世紀型スキル」を養う田園調布学園中等部
- 言語力を武器にボランティアの精神で生きる目黒星美学園中学校
- 管理ではなく寄り添うことで生徒の自主・自律を見守る和洋九段女子中学校
- 聞いて 話して 体を動かして週4時間の「英語耳」をつくる授業品川翔英中学校
- やる気に働きかけるキャリア教育で着実に伸びる大学合格実績東京女子学園中学校
- 知的好奇心を呼び覚ます「探究女子」教育で社会と人生の変化に対応できる素養を身につけるトキワ松学園中学校
- オーストラリア「人間力研修」 世界と生きるために西武台新座中学校
- 1年間の留学で人間力を養う国際交流コースが誕生武蔵野大学中学校
- 球技会をはじめさまざまな行事を通じて豊かな情操と自主性を育む森村学園中等部
- 世界標準の教育で伝統と環境を活かし自ら学び、考える力を養う玉川学園(中)
- 教育環境が進化するなか新制服に込められた伝統の“大妻スピリット”大妻嵐山中学校
- 未来の道を拓くヒントは自分の可能性をあきらめないこと聖望学園中学校
- 一人ひとりの能力・個性を伸ばす指導足立学園中学校
- 主体的に将来を選び取る3段階の選択ステージ目白研心中学校
- 何事にも積極参加で得た多彩な経験と大切な仲間たち八雲学園中学校
- 総合 多彩な職業人が語る月1回の定期講演会共栄学園中学校
- 広い視野で捉えた「他者理解」の精神で未来を生き抜く武蔵野中学校
- 新入生合宿 他者と関わり信頼関係を築く3日間獨協中学校
- 地道な努力とチームワークで全国大会に出場!バトントワリング部/ダンス部桜丘中学校
- 真の「グローバル」とは日本を解体することではなく開放することを意味する駒込中学校
- 大学のその先へ 社会に出てからも役立つ真の力を養成する青稜中学校


