私立中高進学通信
2015年4・5月合併号
Teacher's Lounge 先生たちの座談会
三田国際学園中学校
「もっと知りたい!」から始まる学び
ICT教育と相互通行型授業の21世紀型教育で活気づく新生校

――伝統校が挑んだ改革に多くの注目が集まっています。改革を進めてきた先生方の思いをお聞かせください。
新しいものを取り入れていく中で、教育者をめざした原点回帰ができ、使命感も再認識できました。自分自身も変わりたいと思うようになりました。
齋藤先生
大橋学園長の「こういう学校にしたい」という思いについていきたい、どうすれば実現できるのか真剣に話し合う時間が増えましたよね。

理科教諭。ICT活用委員。古典的なものから新しいものまで幅広い実験を扱い、研究者としての素養を持った生徒の育成をめざしている。
川口先生
生徒の喜ぶ姿が見たくて、教員みんなが同じ方向を向き始めました。
齋藤先生
本校のICT教育は、まずiPadありきで「これをどう使うの?」というものではありません。本校がめざす相互通行型授業をより良いものにするために必要なので、そのツールとしてICTの導入、生徒はもとより教職員も1人1台iPad導入になりました。
川口先生
最初は戸惑いもありましたが効率的な使い方を模索したり研修を通じて、教員達がより団結したりするようになっていきました。
齋藤先生
そうですね。もっと生徒のキラキラする顔が見たい、このツールを使って理想とする教育を実現したい、使いこなしたい、という思いがわきあがりました。忙しいときでも研修に参加して、終了後も誰も帰らないのです(笑)。みんな残って討論しているのです。
川口先生
情報共有が迅速化され、どんどんつながりが強くなっていきましたね。
芥先生
「BUILD」(※)の「U」には「United」(「つながっている」)という意味が込もっているんですよ(笑)。
※BUILD:Become United in Learning Devicesの略。「築き上げる」「形成する」「将来を描く」を目的としている。
――授業はどのように行われるのでしょうか? 生徒さんとの関わり方や指導について先生方それぞれの取り組みを教えてください。
齋藤先生
テーマを身近に感じることができるように、生徒達が「もっと知りたい!」と思うポイントを想定して、トリガークエスチョンを投げかけるようにしています。「最終的にB地点にたどり着くために、まずはA地点から始めよう」とすることで、考えるためのスタートラインに立てるようにしています。

社会科教諭。ICT活用委員。真摯なまなざし、みなぎる熱意で生徒の心をつかむ。グローバルな視点で今をとらえつつ、未来を見据えた選択肢を提示する。
内田先生
例えば、「なぜアフリカは貧困率の高い国が多いのか?」というテーマに対して、生徒は「アフリカの課題・問題」に関する情報収集から始めます。次に集めた情報を、自らの視点で分析をする。ここから、「収集した情報のどこに着目をするのか」「その情報から読み取れることは何か」と思考することで、与えられた知識ではなく、自分なりの答えを導きだします。
芥先生
この、自分で答えを導きだす練習を繰り返すことが「考える力」をつけるために必要なのです。それは時間がかかることなのですが、ICTを活用することで効率化できるんです。たとえば演習問題をiPadに入れて家で解くことで、授業では考えることに時間を割くことができます。
川口先生
ICT教育を導入する前は、実験手順を書いたプリントを配付していたのですが、今は白紙を配ることがあります。実験の進め方を、自分達で考えて、調べてほしいからです。生徒達も我々と同じで、最初は戸惑っていましたが、となりの班のやり方を参考にしたり、iPadで調べてみたりして「これだ!」と思う手順を組み立てられるようになりました。

情報科教諭。ICT活用委員としてプログラムを担当。「ICTは人を幸せにする」というポリシーのもと、その良さを伝えながら学園を盛り立てている。
齋藤先生
他にも、情報科では「エンドユーザーとして情報を楽しむ」というミッションを果たすことが可能になりました。今後は受け手としてだけではなく、発信する側としての思考力が、ますます鍛えられていくと思います。プレゼンも、「うまくなりたいから教えてください」と、コツを聞きに来るようになりました。
川口先生
生徒達に良い意味の欲が出てきていますよね。気づいたらプレゼンの練習をし合って、意見交換をしているなんてこともあります。
芥先生
まさにそれが相互通行型授業の醍醐味です。教科と生徒、生徒と生徒、教員と生徒がつながっていく。答えを提示して解き方を説明するのではなく、問題を投げかけることによって生徒は考えようとします。さらにそれを人に伝えるためのポイントを習得していくのです。
齋藤先生
プレゼンって、「うまくなりたい」と思わなければうまくならないんです。言われたことをただこなしているプレゼンには、何か物足りなさを感じてしまいます。それを超えたときは、私達も「おおっ!」となります(笑)
川口先生
そういう熱意あるプレゼンを聞くと、本当に感動しますよね。
内田先生
日本人がプレゼンに「苦手意識」を持っているのは、プレゼンをする機会が少なかったため、プレゼンの「やり方がわからない」ことが原因だと思います。本校では、中1からプレゼンについてレクチャーしていきます。プレゼンとは、聞き手に自分が伝えたいことを理解してもらうこと。聞き手に理解してもらうために、必要なスキルや生徒に理解してもらうことからスタートしているので、生徒はプレゼンに意欲的になれるのだと思います。
――なるほど。そうした授業を展開していくために、先生方が努力なさっていることも多いのではないですか。
齋藤先生
教員自身もいろいろな勉強をしています。たとえば教員は全員、英語力の習得に力を入れていますよ。
川口先生
校内で行き交うメールは、日本語のあとに英語でも書いています。ネイティブが増え、コミュニケーションをさらに図るためです。これがけっこう難しい(笑)。でもみんなチャレンジしていますよ。
内田先生
グローバル社会はいずれ到来するものでなく、既にスタートしていると私は考えています。日々、世界は変化し続けている。そんなグローバル社会において教員の情報収集は欠かせません。新聞など、さまざまなニュースソースを元に、生徒たちに情報を伝えていきたい。現在の学習とこれからの社会とのつながりを意識させることが大切です。教科書の記述や教師の意見が正しいと生徒に伝えるのではなく、いろいろな現実社会の問題や課題を生徒と一緒に考えていきたい。一方で、入試問題の情報を収集することも重要です。これから入学する中1が大学入試に挑戦する6年後は、大学入試改革が進んでいる可能性が高いですから。入試問題をはじめ、受験に関する情報収集にアンテナをはることは大切です。
川口先生
生徒達と充実した議論をするために、情報収集は大切ですよね。

数学科教諭。ICT活用委員会委員長。同校ICT教育のスローガンとなっている「BUILD」の名付け親でもある。
芥先生
私も生徒の数だけ答えがあると思っているので、まずはその答えを引き出していけるようにしたいです。
齋藤先生
本校には、勉強熱心で前向きな教師がいっぱいいます。そんな教師に囲まれて思春期を過ごすことは、生徒の将来像には必ずプラスの影響になると信じています。
内田先生
説明会には多くの方が足を運んでくださいました。なかでもお父さんの姿を多く見かけました。第一線で社会の流れを肌で感じている保護者の方々が、本校がめざす新しい教育のビジョンと熱意ある校風に共感してくださっている。そう感じています。
(この記事は『私立中高進学通信2015年4・5月合併号』に掲載しました。)
三田国際学園中学校
〒158-0097 東京都世田谷区用賀2-16-1
TEL:03-3707-5676
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