首都圏の私立中高一貫校約300校のうち、創立100周年を超える学校は、前身や学園の創立を含めると約100校あります。
これらの学校が私学の先頭に立ち、日本の教育を牽引してきたことは間違いありません。
ここでは具体的に学校を紹介していきます。その魅力をぜひ感じ取ってみてください。
“本質”を大切にし
新しい“変化”も取り入れる
現在の日本の学校制度は明治期に作られ、その後大正期にかけて、多くの学校が創立しました。当時の日本は、文明開化により目覚ましい発展を遂げていた時代。そのため、この時期に創立した伝統校は「近代日本を支える人材の育成」という創立者の熱い思いが、今に息づいています。
伝統校の魅力の一つは、長い歴史のなかで培われた財産の数々です。例えば、新築・改築を経たとしても教育理念を色濃く反映した校舎、豊富な蔵書を誇る図書館などのほか、長年の試行錯誤のなかで培われた教育実践も、貴重な財産の一つです。創立時から続く伝統行事も多く、先人の知恵や工夫がさまざまな形になって今へ受け継がれています。
伝統校のなかには卒業生に歴史的な偉人、著名人などが並ぶ学校も少なくありません。同窓会のネットワークも強く、政治・経済・芸術など第一線で活躍する卒業生が訪れ、生徒たちに講話をしてくれる機会もあります。また、伝統校同士のつながりも強く、対抗戦などの行事は大いに盛り上がります。教育内容に焦点を当てると、自由研究や論文などアカデミックな取り組みや体験的な学びが目立ちます。目先の大学受験にとらわれず、社会に貢献できる教養人を育てることに、多くの伝統校が主眼をおいているからです。一方伝統校には、男子校や女子校、宗教系の学校などが比較的多く、系列の大学や小学校を併設する学校も少なくありません。その多くは都心にあり、歴史と文化の香りが漂う街のなかで学校生活を送れる点にも注目しましょう。
改革にも意欲的で、新しいコースを設置したり、先進的な教育内容や方法などを積極的に導入したりする学校もあります。創立からの教育理念はそのままにそれを実現するための手段は柔軟に変えていく。そのような“不易流行”の教育が基本スタンスとなっています。
この不易流行が生徒たちにも継承されている例を紹介しましょう。ある伝統校はコロナ禍で文化祭中止の危機に陥ったため、生徒たちは「何とか文化祭を開催したい」と考えました。毎年文化祭を行うことは当たり前でしたが、それができなくなる可能性が高まったことで、生徒の大部分が文化祭を開催する意味をより深く考えるようになったのです。その結果「文化祭は、長い年月にわたり守り続けてきた学校独自の伝統であり、絶えず変化しながらも積み重ねてきた時間と文化。その伝統、時間、文化を通じて、生徒同士互いに影響し合い成長していける“場”である」と気づいたそうです。このような生徒が多いことは、まさに伝統校の特色と言えるのではないでしょうか。