本校卒業生である私は、中学生の時に国語の授業で「競技かるた」を体験し、その魅力を知って「百人一首愛好会」を立ち上げました。これが現在の「競技かるた部」の前身です。
競技かるた部は競技の楽しさ、奥深さを実感することを心がけながら、中学生と合同で活動しています。部員はとてもフレンドリーな関係を築いていますが、いざ試合になると、先輩・後輩に関係なく実力で競い合うなど、上下関係を保ちながら切磋琢磨しています。部のモットーは『自主自律』。自分たちで考え、行動し、競技かるたを通じて人間性を深め合っています。
百人一首のなかで最も好きな和歌は、俊恵法師の「夜もすがら もの思ふころは 明けやらで ねやのひまさへ つれなかりけり」です。現代語に訳すと「愛しいあなたを思って物思いに沈む一晩中、夜がなかなか明けようとしないので、いつまでも朝日が差し込まない寝室の隙間さえも薄情に思えます」となります。「ねやのひまさへ つれなかりけり」という言葉の響きに美しさを感じます。
百人一首には「決まり字」といって、最初の一文字目や二文字目を聞けば、どの札か特定できる和歌があります。俊恵法師が詠んだこの和歌の「決まり字」は「夜(よ)も」の二文字です。一文字目だけ聞けば「この札だ!」とわかる和歌もあれば、六文字目まで聞かないとわからない和歌もあります。
最初の一文字目を聞いただけで「下の句」が特定できる和歌は「一字札」と呼ばれ、全部で7首あります。この7首は「上の句」の最初の一文字をとって「む・す・め・ふ・さ・ほ・せ」と覚えます。俊恵法師が詠んだ先ほどの和歌の「決まり字」は「よも」の二文字です。しかし試合が進行すれば「よも」だった決まり字が「よ」に、さらに短く変化していきます。札を素早く取るためには、これらの「決まり字」を頭に入れ、その変化についていくことが重要です。あわせて、「上の句」の最初の数文字の音を素早く聞き取ることも勝敗の決め手となります。
このように競技かるたには瞬発力と集中力が要求されるのです。なお、競技かるたには対戦相手のほかに、和歌を読み上げる読手が必要です。読手には、選手が集中して和歌を聞けるように読むとともに、美しい日本語を伝える役割があります。
この読手講習会が今年5月に本校を会場に行われ、「A級公認読手」の資格をもつ私が講義と指導を担当しました。主催は「千葉県高等学校文化連盟小倉百人一首かるた専門部会」で、対象は読手に挑戦したいという千葉県内の高校生や、かるた部の顧問の先生方です。こうした活動を通して多くの方々に競技かるたの素晴らしさ、日本語の美しさを知っていただけたらと思います。