「2022年には現在の2年生全員にiPadを持たせるとともに、無線LANの工事も完了させ、ICT環境を整えました。本校は2018年の段階で教室にプロジェクターを配備して教員が授業に活用していたので、ICTの本格導入はスムーズに行われました。今年の春に入学した1年生全員にはSurface Go 3を持たせています」
そう話す下澤先生は「MIEE(マイクロソフト認定教育イノベーター)※」の資格取得者で、ICT化推進の中心的な役割を担っています。
「iPadからSurface Go 3に変えた背景には、本校の教育目標があります。本校がめざすのは『社会人基礎力』の育成です。“なりたい自分になる”ためには学力と合わせて、この社会人基礎力が必要となります。現代社会における多くの企業や病院、幼稚園などでは、マイクロソフト社の文書作成ソフトや表計算ソフト、プレゼンテーションソフトなどが使用されています。こうした同社ソフトの操作に慣れることも社会人基礎力を養う上で大切な要素となると考えたのです」
生徒たちはタブレット端末を、主にノートとして活用しています。教員から送信されたPDFのプリントに、キーボードやペンシルを使ってメモを書き込んだりするのです。また、教員は常に生徒一人ひとりのノートチェックができるようにしています。
「ICTの本格導入の目的には、『特進・看護医療コース』が、組織に奉仕できるサーバントリーダーの育成をめざしていることもあります。サーバントリーダーとは、その人がいるだけで場の雰囲気が和らぐような存在、あるいは、まず相手に奉仕し、その後にチームを先導するようなタイプのリーダーを意味します。タブレット端末を有効活用して表現力とともに内面を磨き、豊かな心をもったサーバントリーダーを本校から社会に輩出したいと考えているのです」
一方、同校ではICTを進路指導にも大きく役立てようとしています。アンケートを配付して、生徒一人ひとりの感性や実績、得意分野、進学した大学などのデータを蓄積し、進路アドバイスなどに活かすのです。
例えば、ある生徒が体育祭や文化祭を心から楽しみ、部活動でも達成感を得たうえで4年制大学の看護学部に進み、現在、看護師として多くの患者さんに慕われているといったデータがあるとします。これを参考にして、同じような経験や感想をもった生徒に看護師の道を勧める、あるいは提示することができるのです。
「本校は総合型選抜で実績をアピールして進学する生徒が多いので、こうしたデータは進路指導に大きく貢献します。また、定期試験や模擬試験の成績、英検などの取得級といったデータは、一般選抜で受験する生徒に有効活用できるのです」
※MIEE……「Microsoft Innovative Educator Expert」の略。マイクロソフト社の公式認定資格。