城西大学附属城西高等学校では、2024年度より普通クラスを『アカデミック&クリエイティブクラス(略称ACクラス)』に改称し、新体制をスタートさせます。 ACクラス誕生の背景や新体制のもとでめざす教育について、校長の神杉旨宣先生にお話を伺いました。
城西大学附属城西高等学校では、2024年度より普通クラスを『アカデミック&クリエイティブクラス(略称ACクラス)』に改称し、新体制をスタートさせます。 ACクラス誕生の背景や新体制のもとでめざす教育について、校長の神杉旨宣先生にお話を伺いました。
同校では、大正自由教育に立脚する『天分の伸長』『個性の尊重』『自発活動の尊重』を建学の精神とし、生徒一人ひとりの才能を引き出し、誰もが目標に向かって努力を続ける学校文化を培ってきました。
2024年4月にスタートするACクラスでは、同校が100年以上の歴史のなかで培ってきた学校文化を活かし、本物志向のアカデミックな学びとクリエイティブな探究活動を通して、新しい時代を生き抜く力の育成に力を注ぎます。
実社会との接点を重視した探究活動は、同校の特色の一つです。身近な社会からスタートし、徐々に世界へと視野を広げ、現代社会が抱えるさまざまな社会課題を自分ごととして捉え学んでいく体験型学習の機会を設けています。
探究活動の集大成となる高2の修学旅行では、ハワイ・台湾・国内と3つのコースに分かれ、事前学習や現地でのフィールドワークを通して当事者として課題に向き合い、探究を深めていきます。また、高校生の希望者を対象とする『α(アルファ)ゼミ』では、大学や企業、NPOなど外部団体と連携してアカデミックなフィールドワークも実践しています。
「ある年の修学旅行では地域が抱える過疎化の課題に着目し、事前学習を行ったうえでその地域を訪れ、村の活性化につながるいろいろな案を考えて、現地の方にプレゼンテーションを行いました。そこで、村に温泉がないことに注目したある生徒たちが入浴剤を提案、αゼミの一環として土地柄にちなんだ入浴剤を開発し、約1年をかけて高3の10月に商品化へとつなげました。
人々と一緒に食事をしたり、現地の空気を肌で感じたりするなかで、生徒たちの内に『こんなに素敵な場所が、なぜ過疎化してしまうのか』という疑問が芽生えていきました。そして『何とかしなくては』という思いに火がつき、行動につなげていったのです。本校の探究活動のポイントは、このような生の体験を通して得られる行動力にあります」
修学旅行やαゼミにおける探究活動は、進路目標やキャリアデザインにつながることも少なくありません。また、αゼミに参加する生徒の多くが、総合型選抜や学校推薦型選抜を視野に入れ、目的意識をもって難関大学をめざしています。
「入浴剤を開発したグループのメンバーで、αゼミでの活動を活かして総合型選抜で津田塾大学に合格したある生徒は、現在『地域に寄り添った地域振興が必要』という目標をもち、地方公務員をめざして学んでいます。
また、あらゆるデータを自分なりに分析して調査を重ね、『年配の方に向けた情報発信にはSNSよりもテレビのほうが効果的である』という結果に着目したある生徒は、「地方局のアナウンサーになって地方活性化に尽力したい」という志望動機をレポートやプレゼンテーションで表明し、公募推薦で学習院大学に進学しました。
本校の生徒がリーダーとなって取り組んだ地域創生プログラムが、NPO法人が主催するイベントで最優秀賞を獲得したこともありました。このチームは東京都の孤独死と独居率の高さに着目し、「高校生が週に何回か地域の独居老人宅を訪問する取り組みを提案しました。この生徒はその後、NPO法人の設立を目標に明治大学へ進学して学んでいます」
新体制となるACクラスは、国公立大学・私立大学を問わず、一般選抜、総合型選抜、学校推薦型選抜など、あらゆる選抜方式に対応したクラスです。
「本校では『生徒一人ひとりの可能性を最大限に伸ばす』という教育哲学から、『特進クラス』などを設けず、成績や偏差値でクラスを区分することもありません。新体制においてもその方針は変えていませんが、生徒の関心や希望に応えられる指導体制を構築していきたいと考えています。
一般選抜で大学受験に臨める学力をつけるのはもちろんのこと、総合型選抜で難関大学への進学をめざす生徒たちにも対応できる体制にしていきます。また、部活動や生徒会活動に打ち込んだ生徒が学校推薦や指定校推薦を受けられるようにもしていきたいと考えています。
例えば、一般選抜で国立大学の理系をめざす生徒には、5教科の放課後ゼミナールや7時間目授業など、課外講座の充実を図ります。授業においても国・数・英の習熟度別授業を行うなどして、合格を勝ち取れる学力を徹底的に養います。
総合型選抜をめざす生徒には、『αゼミ』や10コースから選択できる探究型学習、修学旅行などを充実させ、難関大学の総合型選抜・公募制特別推薦選抜で合格を勝ち取れる知識とスキルを身につけられるようにします」
生徒の多様な進路希望は、国内のみならず海外にも目が向けられています。2022年には、同校に通いながらアメリカの名門高校卒業資格も同時取得できるオンラインプログラム『USデュアルディプロマプログラム』が始動しました。卒業生は、全米大学ランキングトップ5%に入る大学を含む18大学への推薦入学(100%学部入学)が認められるほか、全米200大学が加盟する給付型奨学金制度(授業料最大60%免除)の受験資格を得ることができます。
もとより同校では国際教育が盛んです。1982年にアメリカの高校との姉妹校交換留学制度が発足して以来、カナダ・オーストラリア・ニュージーランドといった英語圏のみならず、韓国・中国・台湾の学校と姉妹校・提携校関係を締結しており、語学力だけでなく、生徒全員が異文化を身近に感じ、国際感覚を養えるようさまざまな機会を設けています。また、コロナ禍により主に国内で取り組んでいた探究活動も、海外で展開できるようになりました。
「本校は校訓に『報恩感謝』を掲げています。恩に報いるためには、『誰かの役に立った』『自分の行動を喜んでもらえた』といった体験を通して、自己肯定感を高めていくことも大切です。そのために、国内・海外の体験学習などで積極的に行動して成功体験を積み重ね、自己肯定感を育んでほしいと思います。そして、自発的に諸課題に挑んでいく力をもち合わせた人間味あふれる若者に育ってほしいと願っています」
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