「本校では1年次の4月に、進路ガイダンスを設けています。そこでは新入生に鉄道会社がどういう人材を求めているか、どんな職務があるのかといった話をします。
本校の入学者の中で最も多いのが電車の運転士を希望する生徒です。運転士になるには駅係員からスタートして、車掌などを務めて乗務員の経験を積む必要があります。こうしたステップも詳しく説明します」
そう語る樋口先生は、鉄道会社に15年間勤務し、運転士を務めていました。
「鉄道の仕事は時間が不規則です。そこで、生徒には山手線の初電と終電の時刻を見せて、『この初電に対応するためには、駅員は駅に泊まらなければなりません』というような話をします。夢に思い描く運転士の仕事と、現実の仕事とは違うことを知ってもらうためです」
同校の生徒は樋口先生をはじめ、実際に鉄道業界で豊かな経験を積んできた教員から指導を受けて成長していきます。そのため、就職先とのミスマッチはほとんどありません。同校から就職した生徒の離職率は極めて低く、鉄道や鉄道関連各社の信頼度は非常に高くなっています。それが多くの一流企業からの求人につながっているのです。
「本校は女子が少ないのですが、その多くが鉄道業界で活躍しています。鉄道業界は女性ならではのソフトな対応を評価して、多くの女性職員を求めているからです。
2016年に『運輸システムコース』を卒業した女子生徒が現在、千葉県の流山市にある流山駅から松戸市の馬橋駅を結ぶ流鉄株式会社で運転士を務めています。流鉄初の女性運転士です」(樋口先生)
また、近年は公務員を希望する生徒が増えてきたのも特色です。2022年には男子生徒1名が外務省に、女子生徒1名が防衛省に入省。2名もの国家公務員は同校初です。
「本校では、一昨年から『2・3年合同選択授業』を設けています。これは、コースの枠を越えて受講できる授業で、『公務員対策』もあります。国家公務員になった2名はこの授業を受けており、それによって力をつけた結果と言えます。
ほかには、旅行業務取扱管理者や電気工事士といった国家資格の取得講座や、中国語基礎、ペン習字基礎、観光英語、就職対策基礎演習などの授業をそろえています」(冨田先生)
進路実現につながる行事も用意されています。『インターンシップ』や『工場見学』です。
「『インターンシップ』は2年次の夏に4日間、鉄道会社を中心に行われます。かつては“駅務実習”といって、3つの鉄道会社に生徒を送り出していましたが、現在はホテルをはじめとするサービス系の企業にもご協力いただき、接客や仕事のノウハウを身につけてもらっています」(樋口先生)
特に鉄道会社での『インターンシップで』は、指導にあたる社員が同校の卒業生であるケースが多く、ていねいに教えてもらえるそうです。
『工場見学』は2年次の冬に2日間実施されます。訪問先は鉄道会社の車輌整備工場などで、車輌機器の構造などについて技術者から説明を受けられます。