※1:独立展とは=独立美術協会は1926年から1930年にかけて5度開催された佐伯祐三、前田寛治を中心とする1930年協会展が発端となり、二科会ほかの団体を超えて気鋭の作家が集まり1930年に組織された。1931年1月、東京府美術館で第一回独立展を開催。以来、近代美術史に輝く画家を数多く輩出。現在も創立時の精神をそのまま引き継ぎ、会員と前途有望な準会員、会友、出品者により毎年10月国立新美術館で展覧会を開催している。
清 美晴さん(アルファコース 特別選抜クラス/高2)
美術科の教師か学芸員になることが目標の清 美晴さん。
入賞作品『血の滲むような』。作品サイズF130号(縦194㎝×横162㎝)、油彩、アキーラ。
この作品のテーマは「努力」です。勉強も運動もすごくできる明るくてかっこいい友達がいて、その子は花咲徳栄の体操部なのですが、ふと手の平を見ると、いつもマメだらけなんです。見えないところで努力していることを思うと、尊敬する気持ちがわいてきました。
『血の滲むような』は、そんな友達の飾らない姿を描いた作品です。
描こうと思ったのは高1の冬でした。実際にキャンバスに向かったのが2021年の4月からで、7月に『第19回 埼玉独立展』に出品させていただきました。講師の先生方からは、色合いや奥行きのこと、また、手のカタチなど、詳細な講評をいただきました。どの先生からも言われたのが、「楽しんで描きなさい」ということでした。絵を描くことは苦痛ではありませんが、ちょっと悩んでいた時期でもあったので、「楽しんで描くって大事だな」と、気づくことができました。それから約1カ月間かけて手直しをして、9月末には全国公募の『第88回 独立展』に出品しました。
極めて珍しいという話を聞いて、それ自体はとてもうれしかったです。ですが、冷静に自分と向き合ってみると、まだまだ実力不足な面が多々あり、もっと努力しなければと反省しています。高校生だからといって、甘えてはいけないとも思いました。
小学校に入る前から絵を描くことは好きでした。でも部活動などに所属していたわけではなく、花咲徳栄に入って初めて「美術部」に入りました。そこで出会ったのが美術部監督の米田和秀先生です。米田先生の指導は、部員のやりたいようにやらせることも基本としつつ、行き詰まった時に相談すると的確に導いてもらえます。楽しく制作に没頭できる環境が、花咲徳栄美術部の一番の良さだと思っています。
大学は教育学部の美術専攻に進んで、美術科の教師か学芸員になることを思い描いています。
清水彩音さん(アドバンスコース 総合進学クラス/高2)
憧れの『劇団四季』に裏方として入ることをめざしている清水彩音さん。
入賞作品『崩れゆく』。作品サイズF130号(縦194㎝×横162㎝)、油彩、アキーラ。
近年、海の環境問題が地球規模で叫ばれるようになりました。自分が何気なく捨てたプラスチックごみが、海洋汚染の原因の一つになっていると考えた途端、いたたまれなくなりました。このままじゃいけない、何か自分にできることはないか、そんなことを自分自身に問うなかから、『崩れゆく』を制作するきっかけが生まれました。
とりかかったのは2021年の4月からです。地方の展示会への応募は間に合いませんでしたが、7月くらいまでには、どこを明るくして、どこを暗くするかなど、全体的な雰囲気はつかんでいました。8月くらいから本格的に描き始めたので、高2の夏休みはほぼ作品と向き合っていたような感じです。自宅だとなかなか集中できないので、午前中は学校のアトリエで集中し、午後はまた別のポスター制作にも取り組んでいました。全国公募の『第88回 独立展』への出品は9月末でした。けっこうギリギリで作業にあたっていたこともあり、気持ち的にはあまり余裕がなかったですね。そもそも“通る”とは思っていなかったので、入選の連絡をいただき、ものすごく驚きました。
実際に六本木の国立新美術館へ『独立展』を観に行きました。確かに自分の作品もそこに展示されてはいるものの、周りの作品と比べれば、自分の実力はまだまだだと思いました。そんな気持ちを今後の創作活動に活かしていきたいと考えています。
朝早く学校に来て勉強したり、休み時間も有効活用したりして学習時間にあてています。「今は美術に集中」「ここからは勉強に集中」と、うまく切り替えることを意識しています。
できれば劇団四季に入って、舞台の裏方をやりたいです。ずっとクラシックバレエを習っているのですが、正直「出る側よりも裏方のほうがかっこいい」と思うようになったからです。実は花咲徳栄の卒業生が劇団四季に入社しています。その方も美術部監督の米田和秀先生の指導を受けました。私もその後に続きたいと思っています。
私が一番に心がけているのは、「安心して取り組んでもらうこと」です。「先生にダメ出しを食らうのではないか」「実力がないと言われるのではないか……」というような心配は無用です。安心して目の前の作業に没頭してください。地道にコツコツやる生徒を全力で応援しています。ちなみに、美術の授業で一生懸命に作品と向き合っている痕跡があれば、必ず評価しています。
2021年度も美術大学に進学したいという生徒が4名います。これからも、美大進学を考える生徒一人ひとりに、とことん寄り添っていきます。
花咲徳栄高校の『アドバンスコース 総合進学クラス』では、進路に応じて2年次より専門教科選択(※2)が可能です。
「美術類型の専門教科は、『絵画』『素描』『クラフトデザイン』『構成デザイン』『彫刻』の5つです。高2は『彫刻』以外の4教科を週8時間、高3は『彫刻』を含む5教科を週10時間履修します。なお、『クラフトデザイン』は手業による工芸品の制作、『構成デザイン』はポスターのデザインです。体験入学は平日も開催していますので、興味のある方はぜひ参加してください」(米田先生)
※2:専門教科選択=1年次は基礎学力を徹底強化し、2年次から芸術(音楽・美術)、情報、保健体育の各類型から1つを選択して履修する。その専門科目を中心に、2・3年次は各自の進路に応じた専門的なカリキュラムで学習していく。
最近は「美術部に入部したい」という理由から、第一志望で受験する中学生も増えているという花咲徳栄高校。美術部はもちろん、ほかの部活動への相談も、顧問の先生方がていねいに応じてくれます。まずはメール(club@hanasakitokuharu-h.ed.jp)で問い合わせてみよう!
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