川端先生は同部の卒業生。
野球を通して挨拶や礼儀を学び、チームメートの大切さを知ります。
川端先生のモットーは「野球を通しての人間形成」。
部員は約60名、マネージャーは3名。甲子園出場をめざして練習にも気合が入ります。
平日は週に1日休み。今はコロナの感染防止対策のため練習は1時間30分ほど。
同校の建学の精神は「行学一如」。これは、日々の「行い」と「学び」を同じように大切にするという考え方です。この精神のもと、同校は何事にも精いっぱい取り組む、人間として総合的な力を身につけた生徒を育成することを目標にしています。そして、多くの生徒が文武両道に励み、進路でも部活動でも結果を出しています。
そんな同校を代表する部活動のひとつが野球部です。2021年に開催された第103回全国高等学校野球選手権大会西東京大会で、同校は準々決勝まで勝ち進みました。この試合で惜しくも敗れてしまいましたが、このときの対戦相手である東海大学菅生高等学校は西東京大会で優勝し、この年の甲子園大会に出場を果たしています。
西東京大会にピッチャーとして出場した竹内和将さん(高3)は次のように振り返ります。
「東海大学菅生の選手たちは一人ひとりのレベルが高く、あのレベルまで達していないと勝てないのだと痛感しました。しかし、最後まで諦めずに試合をし、ベスト8に進めたことは、大きな自信になりました」
そう話す竹内さんは小4から野球を始め、中学時代に同校野球部の練習体験会に参加し、雰囲気の良さにひかれて入部したそうです。
「野球から学んだことは、協調性です。また、部員が多いなかで、どのように自分の得意な部分を人に伝えたり、活かしたりしていけばよいかを知りました。この部での貴重な体験を糧に、大学でも野球を続け、自分の力をもっともっと高めていきたいと思っています」
この秋から同部のキャプテンを務める矢崎
「小1のときから野球を続けてきた僕は、文武両道が実践できる環境で野球とともに勉強にも打ち込みたくて、この学校に入学しました。練習はハードですが、通学中の電車内など空き時間を有効活用して英単語を覚えるなどの勉強をしています。
部の自慢は、チームを良くするために先輩・後輩に関係なく意見を言い合えることです。そして選手の活躍を、ほかの選手が自分のことのように喜べることです。たとえば、試合で僕が打つたびにベンチの部員たちの表情が輝くところを見ると、野球をやっていて良かったと思えます。
目標は、もちろん甲子園大会出場です。スタメンだけでなく、全員が心をひとつに甲子園出場をめざして練習に励めるように、キャプテンとして部員の気持ちの鼓舞に努めています」
高1の部員にも話を聞きました。サードとショートがポジションの織田康太郎さんです。織田さんは小3のときに同部の見学に訪れ、部員たちの実力の高さを見て入学を決めたと話します。
「僕は野球から挨拶や礼儀を学び、チームメートの大切さを知りました。野球は一人ではできないので、みんなで支え合っていくという素晴らしさがあります。勝ったときには喜びを、負けたときには悔しさを分かち合うこともできます」
織田さんも矢崎さんも、竹内さんと同様に「これからもずっと大好きな野球を続けていきたい」と白球にかける思いを言葉にしました。
野球部監督の川端教郎先生は、同部の卒業生です。同校の野球部は1999年、第71回選抜高等学校野球大会(春の甲子園大会)に初出場を果たしました。この大会でキャッチャーとして活躍したのが川端先生です。川端先生は当時の思い出を次のように語ります。
「私が中3のとき、本校の野球部が西東京大会でベスト4まで進みました。この試合を見て、本校が甲子園に行ける力をもった学校であることを確信して入学しました。そして私の見立て通り、春の甲子園大会に出場できたのです。この大会の1回戦で勝てたことが私たち部員の自信になり、チームがより真剣に練習に身を入れるようになりました」
同校卒業後、川端先生は駒澤大学法学部に進学して野球部に入部しました。ところが大学2年生のとき、交通事故で肩を傷めてしまったのです。川端先生は社会人野球の選手になるという目標を諦めざるをえませんでした。
そんなとき、高校3年間の恩師である監督から「野球部の指導を手伝わないか」と誘われ、駒澤大学の野球部に籍をおきながら、後輩である部員たちの指導にあたったそうです。川端先生は次第に野球を教えることの楽しさを知るようになり、教職課程を取って社会科の教員となり、現在は母校の野球部の監督を務めています。
そんな川端先生のモットーは「野球を通しての人間形成」です。
「部の目標は、キャプテンの矢崎が語ったように甲子園出場です。今年2021年の西東京大会では、ピッチャーの竹内を含めて良い選手に恵まれたので『ベスト8進出』という当初に掲げた目標は達成できました。しかし、ベスト8とベスト4の間には大きな壁があります。この壁を超えて甲子園出場をめざしたいと考えています。
ただ、部員のなかには自分のペースで3年間、好きな野球を楽しみたいという生徒もいます。私はこのようにさまざまな考え方があっていいと思います。部員一人ひとりの価値観が違うからこそ、部員たちの前に障壁が立ちはだかった時、さまざまな角度から意見が出て、問題解決につながるからです。
そのためにもうひとつ心がけていることは、部員が自由にのびのびと野球ができる環境づくりです。『こんなことをしたら監督に叱られる』というように、部員が私たち指導者の目を気にしていると自分の意志で一歩を踏み出すことができません。ですから私は、『この野球部を、監督の私たちも含めて家族だと思ってほしい』と部員に伝えています。家族なら遠慮なく自分の意志で動けます。お互いの意見も尊重できます。そして、部員には野球を通して、得点のように数字に表せる力だけでなく、思いやりなど数字に表せない力を身につけてほしいと思っています」
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