高校3年間にわたり週1時間『論語』を学ぶ。これは学園の母体が夏目漱石や嘉納治五郎、渋沢栄一など、多くの偉人を輩出した漢学塾・二松学舎であることと無縁ではないはずです。
論語とは、古代中国に生きた賢人・孔子の言行や、その弟子・当時の人々との問答を収録した書物です。『人の道』を学ぶことができるということで、多くの人から長きにわたり支持されてきた古典です。
「論語の授業は開校当初から継続してきました。本校は今年で創立51年ですから、もう半世紀以上も続いています」と解説するのは、入試広報室長の平田先生です。この授業を長年、継続してきた理由は何でしょうか。
「本校の教育の2本柱は『人間力の向上』と『学力の向上』ですが、その前者を実現するために行っているのが、この論語授業なのです。近現代のビジネスマンの中にも仕事や人生の指針としている人が多く、現代社会にも通用する非常に有用なことが書かれています。つまり、これは国語の漢文を学ぶ授業ではなく、『心の教育』のための授業だったわけです。
教材は、章句の英訳も盛り込まれたオリジナルテキストの『論語100選』。授業内容は担当教員の裁量に任されており、「言葉の意味や文法の指導に重きを置く」「章句の内容を深く掘り下げる」など、担当教員によって内容はさまざま。しかし、現代に生きる十代が、果たして漢語で書かれた古代中国の書物に興味を抱くのでしょうか。
「もしかしたら生徒たちは授業中、教員の話を聞いているだけかもしれませんが、そのときに聞いた話が記憶に残り、人生の役に立てばいいと私は考えています」(平田先生)
百聞は一見にしかず。宮下先生(国語科)が担当する高1の論語授業を参観してみることにしましょう。