コロナ禍は、今までの学習スタイルを大きく変えるきっかけとなりました。
ICTがさらに進化する将来は、コンピュータを使った情報処理スキルが求められるでしょう。
ICTと並行して、手を使ってノートを取ることも行っています。
五感を使った学習にICTでできることを併用することで、学びの幅はさらに広がっていく。
八千代松陰高等学校がChromebookを導入したのは約5年前。「1人1台Chromebook × 授業でICTをフル活用! ICTで『わかる授業』『考える教育』を展開し生徒ひとり一人の個性を伸ばす」をスローガンに掲げ、他校に先駆けてICT環境を整備。コロナ禍においても「学びを止めない!」を合言葉にICTを活用した学習支援が行われました。
まず、4月8日の「緊急事態宣言」を受け、新入生に向けて担任が電話で新クラス、今後の予定などを伝え、高2・高3生にはGoogle Classroomで学年からのお知らせ、課題などを毎朝配信し、この日からオンライン授業がスタート。さらに、Google Meetを使って学年・教科の打ち合わせや、生徒・保護者との面談も行われました。
自宅学習期間の延長に伴い、5月初旬にはオンライン授業の「見やすさ・わかりやすさ」「理解度・満足度」「質・量」などについて先生方が生徒の声をリサーチし、教科や学年での検証も行われました。そして5月下旬━━ 1年生が初登校し、全員にChromebookが配付されました。「Chromebookは立ち上がりが速く、グループワークやディスカッションを行うときにも協働しやすいことで選びました。操作もタッチパネルとタイピングの両方ができるので、タイピングの練習ができることも選択の理由でした」
と話す教育情報主任の印東孝祐先生。2年前には全学年にChromebookがそろい、すでに授業や探究学習のツールとして浸透していたので、コロナ禍で休校になった際も、その活用の幅はさらに広がりました。
学習で活用されるのはGoogleが教育機関向けに提供するG Suite for Education です。表計算や文書管理、プレゼンテーションの機能を持ち、グループでレポートを作成し、プレゼンテーションのあとに相互評価を行うなど、協働学習ができます。
例えば、各授業で実施される小テストは、すぐに解答を集計して、間違いが多い問題の振り返りを即時に行うこともできます。各教室にホワイトボードとプロジェクターが配置されているので、今までプリントで配付していた資料や、臨場感あふれる動画なども即時にプロジェクターに映し出せるなど、各教科の授業でICTの活用が進んでいます。
学年・学級活動、クラブ活動で活用されるGoogle Classroomは、各団体のコミュニケーションを図るツールです。自宅学習期間中には課題や小テストの配信、提出や、生徒同士あるいは生徒と先生とのやり取りに活用され、授業の進度が遅れずに済みました。
今年の『松陰祭(文化祭)』は中止となってしまいましたが、書道部による書道パフォーマンスや新体操部の演技をはじめとする各クラブが、趣向を凝らした動画を制作して配信しました。3年生が取り組む卒業レポートは、必要な情報を得て、整理分析し、プレゼンテーション資料を作るためにICTを使いこなした学習の集大成です。
Chromebookを使った授業の良いところは、配信された課題や資料を自分のペースで見ることができるので、どの席にいても黒板が見えないという心配がないところです。入学前にはパソコンを持っていなかったので、タイピングにも慣れていなかったのですが、1年の『情報』の授業で検定に挑戦し、タイピングもできるようになりました。
Chromebookは、ほとんどの授業で活用しています。小テストの解答はクラスメートと共有できるので、間違えやすいポイントが明確になります。個性豊かな解答や、先生も驚くような斬新な発想もあって、お互いに刺激し合いながら学ぶことができます。
高2の修学旅行では山口と長崎に行くのですが、先日は萩市の観光協会の方とリモートでつながって事前学習をしました。萩市が持つ課題を知り、班ごとに解決策を考えて萩市の観光協会に提案する予定です。
自宅学習期間中、Chromebookを使ってクラスで座談会を行いました。みんなの顔を見ることができてうれしかったです。自粛期間中は各クラブ活動が工夫して練習や活動を行っていました。野球部は素振りの動画を撮って、顧問の先生にアドバイスをいただいていたようです。2020年度の『松陰祭』は中止になってしまったので、調理部の先輩たちはロールケーキの制作工程を動画に収めていました。自宅学習期間中の授業は、スライドにまとめられたものがGoogle Classroom(グーグルクラスルーム)に配信されたので、予定通りに学習を進めることができました。
普段の授業でもChromebookを活用しています。生物は2人1組のペアで授業を受けるのですが、2人で出した解答を、すぐに先生がチェックしてくれます。挙手だと指された人しか解答できませんが、Chromebookなら全員が授業中に答えられます。ディベートをするときも、グループでドキュメントを共有して意見を出し合うことができます。Chromebookを使った学習は、授業を何度も見返して、友達の意見を共有できるのが良いところです。
国語の授業において、ICTは意見の共有に便利です。今までノートに書いたものを回し読みしていたのですが、電子黒板に全員の意見を一覧にして共有できます。人の意見を見ることで、違う視点に気づいたり、自分の考えを深めたりするきっかけにもなります。普段はあまり発言しない生徒でも、自分の意見をクラスメートに理解してもらうこともできます。
高1では、『地元企業インターン』に取り組みます。これは八千代市内にある企業が抱える問題について、本校の生徒が考えるというものです。生徒たちはグループでブレインストーミングをし、企業へのインタビューなどを行って具体的な解決策を考えるのですが、その課程でもChromebookの機能を活用しています。プレゼンテーションの資料作成でも、みんなが集まって紙に書くのではなく、別々の場所にいながら情報共有を行い、ドキュメントを作成するなど、効率的な協働ができます。
ICTを活用すると、学校の枠を越えて広く社会とつながることもできますし、世界の人とコミュニケーションを取ることも可能です。主体性を持ってさまざまな人と協働し、社会問題を考え、自分の考えを社会へ発信する経験をして、将来、自信を持って社会で活躍してほしいですね。
家庭科は生活全般に関わる教科です。コロナ禍は、はからずも今までの生活を見直すきっかけになりました。
私は子どもの保育園が休みになったので、保育に関するリモート授業に子どもが参加する機会がありました。調理実習は家で調理をして、レポートにまとめて提出した授業もあります。コロナ禍でなくても、家庭科室が使えない状況もあるでしょう。それでもリモートでできる授業の可能性を感じることができました。また、家庭科では消費活動についても考えますが、コロナ禍のように買い物をするのが難しい状況でも、どのような消費の選択肢があるのかを考えるきっかけにもなりました。
人と接するのが難しかった自宅学習期間中、リモート授業やディスカッションができたことは「自分は一人ではない」という安心感にもつながりました。保護者がリモートワークをしていた家庭では、生徒が将来の働き方について考えたり、予想できない状況に対応する力をつけたりしなければならないと実感できたと思います。さまざまな行事が中止になりましたが、生徒たちは多彩なアイデアを出して共有していました。本校の新しい学びは、ICTを活用することで次のステップへ進む段階にきていると思います。
理科では自宅学習期間中、教員で手分けをして授業動画を作成しました。私は1日1本のペースで『生物基礎』と『物理演習』の動画を作り、配信しました。実験動画は、自粛期間前から活用しています。学校の授業ではなかなかできない実験でも、動画であれば見ることができます。全員が同じ動画を見ながら解説し、家でも振り返ることができるようになったのは大きな進歩です。生徒たちはChromebookを使いこなし、いろいろな機能を発見して、発表用のスライドを作っています。
一方で、ICTを使った学習は進んでいますが、自分の手を動かして体験する学習の重要性は変わりません。実験も動画では疑似体験できますが、本当の実験で得られるものはまた違います。そこで手を使ってノートを取り、観察してスケッチを取る機会はICTと並行して行っています。
ICTがさらに進化する将来は、コンピュータを使った情報処理のスキルが求められます。例えば、実験データをコンピュータ上で情報処理してレポートを作成するといったことが挙げられますが、Chromebookがあればそれも容易に可能になり、生徒一人ひとりの特性を伸ばすことにもつながるでしょう。
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