1954年、東京生まれ。中央大学理工学部、同大大学院卒業。都内私立高校に5年間務めたのち、都立高校の採用試験を受けて約30年間教鞭を執る。晴海総合高等学校副校長を経て、東京都立葛飾総合高等学校の立ち上げに携わり平成19年に開校させる。晴海総合高等学校で校長を務めた後に退職、聖徳大学教授に着任。一般教養としての数学と教職課程希望者への指導、AO入試対策を担当。2020年4月より現職。
1954年、東京生まれ。中央大学理工学部、同大大学院卒業。都内私立高校に5年間務めたのち、都立高校の採用試験を受けて約30年間教鞭を執る。晴海総合高等学校副校長を経て、東京都立葛飾総合高等学校の立ち上げに携わり平成19年に開校させる。晴海総合高等学校で校長を務めた後に退職、聖徳大学教授に着任。一般教養としての数学と教職課程希望者への指導、AO入試対策を担当。2020年4月より現職。
新型コロナウイルスによる長い休校期間を経て授業が再開した際、私が努めてきたのは朝、生徒一人ひとりと目を合わせて“あいさつ”をすることでした。休校により生徒と対面する機会が失われ、集会を実施できなくても、大変な状況を乗り越えて学ぼうというメッセージを伝えたかったからです。
自粛生活や自宅学習など、変化の多い生活を経て1学期の試験が終わった際、「生徒たちの気持ちは緩んでいるだろうか」「何か不安を抱えているだろうか」と思いましたが、それは
私は約15年間にわたり公立高校の「総合学科」に関わってきました。総合学科とは、英語や数学などの共通科目に加え、「国際」「情報」「福祉」など、系列ごとに設けられた幅広い選択科目を有する学科です。自分の将来や進路に沿った科目を選択し、必要な単位を履修すれば卒業できる単位制なので、「自分には何が合っているのか」「どんな進路を選べばいいのか」を考える機会がたくさんあります。
高1の終わりには、共通科目以外の授業を選んで時間割を作成します。与えられた時間割をこなすのではなく、自分が決めた時間割に責任を持って高校生活を送るためです。自分の興味のあることは何なのか、あるいは将来どんな人生を送りたいかを考えなければ、科目選択はできません。重要なのは完璧な時間割を作ることではなく、自分の将来を考えることです。3年生になると、教科横断型のテーマを見つけ、課題研究に取り組んで発表しました。課題を見つけ、仮説を立てて研究・検証し発表する経験は、社会に出てから求められる課題解決力を育てます。
自分を見つめ、自分の将来を考えて過ごす目的は、志を立てるためです。コロナ禍において今は大変な状況ですが、この先、また違った困難がやってくることもあるでしょう。そのときに志を持っていれば、どんな困難も乗り越えることができます。
私自身の高校生活は、早くから将来を決めてはいませんでした。サッカーに打ち込んでいたので、先生に「体育教師になりなさい」と勧められたこともあります。でも、スポーツは自分でやるもので教えるものではないと思っていたので、得意な数学をもっと勉強したくて理工学部に進学しました。最も勉強したのは古典です。なぜなら不得意だったからです。そのときはまだ、「将来は理工学系の知識を活かせる仕事に就くだろう」程度にしか将来について考えていませんでした。
しかし、教育実習で学校へ行ったとき、生徒との関わりがとても新鮮で、「こんな環境に身を置くことができたらいいな」と思ったのです。もしかしたら一般企業に就職したほうが、お給料は良かったかもしれませんね(笑)。でも、学校という場には多くの出会いがありました。人と関わって人と影響を与え合いながら、自分の存在価値を自覚できるのは素晴らしい経験です。それが教員という職業ではないかと思います。
人との出会いは、さまざまな気づきを与えてくれます。公立高校で教鞭を執っていたとき、地域の中小企業の方々と縁があり、産学連携に取り組んだことがあります。本校にも近隣には病院や数多くの企業があるので、地域と連携し“地域に開かれた学校”をめざしたいと思っています。社会人との関わりは、生徒が人間としての土台づくりをして、自分の特性や“好きなこと”に気づくきっかけを与えてくれるでしょう。
中学生の皆さんに将来のことを訪ねても、多くは「まだはっきり決まっていない」と答えると思います。私自身も中学・高校時代はまだはっきりと決めてはいませんでした。そこで重要なのは、悩んだり迷ったりしながら何かに打ち込み、自分のいいところに気づくことです。
Withコロナ時代の高校生活ですが、皆と声をかけ合いながら厳しい時期を乗り切り、これからの社会に求められる“自分の良いところ”を磨いてほしいと思います。
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