1907年創立の日本工業大学駒場高等学校は、工学系教育に重点を置いた指導を長年行ってきましたが、2008年に普通科3コースを誕生させ、より多様な進路に対応する進学校へと舵を切ってきました。そしてこのたび、長く併設してきた工学科の生徒募集を終了し、2021年度からは普通科専一校としてスタートします。これまでの普通科3コースに加え、新しく「文理未来コース」の募集も始まります。新たな教育指針『日駒トリニティ』が整備された今、同校で過去最大となるこの改革について、教頭の藤森啓先生に話をうかがいました。
1907年創立の日本工業大学駒場高等学校は、工学系教育に重点を置いた指導を長年行ってきましたが、2008年に普通科3コースを誕生させ、より多様な進路に対応する進学校へと舵を切ってきました。そしてこのたび、長く併設してきた工学科の生徒募集を終了し、2021年度からは普通科専一校としてスタートします。これまでの普通科3コースに加え、新しく「文理未来コース」の募集も始まります。新たな教育指針『日駒トリニティ』が整備された今、同校で過去最大となるこの改革について、教頭の藤森啓先生に話をうかがいました。
本校は、これまで進学校への歩みを進め、さまざまな教育に取り組んできました。普通科専一化にあたって実践してきた教育の成果を整理しまとめたものが『日駒トリニティ』です。その内容からお話ししていきましょう。
約110年の歴史を有する本校は、これまで時代に合わせて新しいチャレンジを続けてきました。その中で注目すべきは、やはり教員の「教育力」です。教育力とは、「創意工夫の精神」「熱意ある指導」「自己研鑽」と言い換えられるもので、これらは現在も“ティーチングマインド”として本校に息づいています。
次に、「教育姿勢」が挙げられます。「面倒見の良さが本校の真骨頂である」と歴代の校長が口をそろえるように、適切な行動を生徒自身でが選択できるように、さまざまな仕掛けを作りながら「意図的教育」で生徒を導きます。そして、生徒の良いところを見つけて伸ばす「美点凝視」。また、「選択と集中」を実践して、基礎学力の定着を図ることが「教育姿勢」の要素となります。
こうした「教育力」と「教育姿勢」に裏付けられた教育実践こそが、『日駒教育構想』です。その中には3つの項目があり、「言語教育」「探究」「錬成」が掲げられています。学力の根本は国語と言われますが、それを徹底したものが「言語教育」です。ここには“能動的読書体験”をはじめ、“批判的思考”や対話的態度を養う“生産的会話”という本校独自の教育も含まれています。「探究」は、AI時代を生きる力、「錬成」は、現在のコロナ禍や自然災害など予測困難な時代を生きる力を養うもので、生徒が持っている創造力やコミュニケーション力などを引き出すための教育です。
このように『日駒トリニティ』は、大項目である「教育力」「教育姿勢」「教育実践」から、さらに3つの項目に分かれる重層的な三位一体の構造を持つ教育体制となっているのです。
では、コースについて紹介しましょう。これまでの普通科3コース(特進・理数特進・総合進学)に加え、2021年度より「文理未来コース」を新設し、4コース体制になります。本校では、生徒の目標実現のための学力はもちろん、コースごとに生徒に合った人柄を育むこともめざしています。
「特進コース」では、幅広い豊かな教養と物ごとに対する洞察力や、リーダーシップを培っていきます。進学目標は東京大学を含めた国立・私立の難関大学。同コースは生徒同士の仲が良く、互いに切磋琢磨する雰囲気が特徴です。
「理数特進コース」には研究者をめざす生徒も多いので、協働して仲間と議論する姿勢など、学習に取り組む態度も重視しています。国立をはじめとする難関大学の理工系学部をめざすコースで、落ち着いた印象の生徒が多いですね。
「総合進学コース」は自分の得意なものを見つけて、GMARCHや日東駒専などの私立大学への進学をめざします。多様な生徒がのびのびと学校生活を送る、にぎやかな雰囲気のコースです。
新設の「文理未来コース」は、特設科目が多いのが特徴です。「ガラス工芸」や「陶芸」などのほか、「句作体験」などクリエーション(創作)に関する科目を数多く用意しています。総合進学コースと同様に私立大学をめざすなかで、豊かな感性と創意工夫の精神を活かし、一般入試だけではなくAO入試や推薦入試などで必要な、小論文や面接への対応力も育成する予定です。文理未来コースのキーワードは「創造力」。自由な発想で自分の夢をカタチにするための学びを大切にしてほしいと考えています。
近年、本校では大学合格実績が伸びており、2020年春には国公立大学に11名、GMARCHに50名が合格しました。普通科専一化により、大学合格実績の数字はさらに伸びていくものと予想しています。
また、改革の目玉のひとつ、2021年度に「図書館」と「体育ルーム」「トレーニングルーム」をオープンし、学校生活がさらに充実したものとなるように準備を進めています。運動施設は、生徒たちが体育や部活動などを通して体力を増進させるために活用してもらい、図書館は、開架を多くして利用しやすく居心地の良いスペースにしたいですね。
本校の教員は、生徒の基礎学力の充実という土台作りとともに、生徒たちが自分の目標を実現し、楽しい学校生活を送れるようにと配慮しながら指導を行っています。その過程で、日頃から生徒に常識的なふるまいなど、人間としてあるべき姿を示し、最大の願いである「人柄を育む」ことに注力しているのです。今回の改革を機に、本校はさらなる飛躍をめざします。
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