
博士(国際情報通信学)川村春美先生

博士(理学)須志田隆道先生
中学卒業後の16歳から「5年間一貫教育」で学ぶ“高専”の学校生活。サレジオ高専では、一般科目と専門科目を効率良く学びながら、理論と実践を兼ね備えた技術者を養成するこだわりの教育を展開しています。
そんな魅力的なサレジオ高専の学科の中から今回は、基礎から実践までを着実に学べる『情報工学科』にフォーカス。情報工学の基礎と共にコンピュータハードウェア、ソフトウェア、情報ネットワーク技術を身につけ、実践能力も備えた情報技術エンジニアやネットワークエンジニアの養成をめざす同学科の魅力を、2名の先生方に語っていただきました。
川村情報工学科の教育の柱は3つありますが、もう一つ“プラスワン”の要素として、情報工学の基礎となる「情報数学」と「アルゴリズム」を、2学年、3学年で学修します。情報工学の専門課程に進むための基礎部分をしっかりと学ぶことで、情報工学の重要な土台を作ってもらいます。
須志田仮に中学段階で数学が苦手だとしても、新入生にはとくに手厚いサポートを行っていますので、安心してください。
川村それでは3つの柱についてご紹介していきます。まず1つめは、「コンピュータハードウェア」です。「そもそもハードって何?」という視点から、実際に自分たちでコンピュータを分解しながら、ここがメモリー、これがCPU……というように、現物を確認しながらそれを理解していくという体験的な授業を展開しています。
2つめは、「ソフトウェア」です。プログラミングというと直感的にわかりやすいと思いますが、情報工学科で私が担当している「画像処理」もそうですが、画像を処理していくなかで、どんなアルゴリズムを用いて進めていくかというふうに、ソフトウェアの中を一つひとつビジュアルで分析していく点も学生たちに好評です。
須志田アルゴリズムは私の担当領域の1つでもあるのですが、理論だけが先行しないように、全員がプログラムを書けるようになるところを意識しながら授業を展開しています。
川村3つ目の柱が「情報ネットワーク」です。例えば、インターネットはどのような仕組みになっているのか、IPアドレスがどのような仕組みで学内外のネットワークにつながっているのかなど、情報ネットワークを学ぶ上での基本となるものを、座学だけでなく、数多くの実践を通して学んでいきます。
須志田座学部分と実験部分、常に2つの側面から学ぶところを、情報工学科の大きな特徴と捉えてもらっていいと思います。
川村そうですね。これから学生たちに情報工学の分野へ進んでいくにあたり、最低限必要になると思われるところをまんべんなく身につけてもらいたいですね。とはいってもプログラミングが苦手とか、プログラミングは好きだけどネットワークはちょっと難しいなど、学生によってそれぞれ得手不得手があるのも事実です。でも大丈夫です。学生一人ひとりが持つポテンシャルを引き出すことが、私たち教員の役目だと自覚して取り組んでいるからです。
須志田私たちは学生一人ひとりの可能性を広げるためにも、どんどん学びの機会を提供していくことを大切にしています。
川村情報工学科のもう一つの大きな特徴として、2週間に一度のレポート提出があります。私たちが重視しているのは、「決まった日にレポートを出す」という行為が「締め切りを守る」という習慣につながるところです。これは学内だけではなく大学に進学しても、就職しても、締め切りを守ることがとても重要なルールになるからです。
一方、頻繁にレポートを提出することについては、これから先の「技術レポートを書く」取り組みに慣れてもらおうという狙いがあります。卒論もそうですが、技術的な文章・レポートを書く際の決まり事を、しっかりと身につけてもらっています。
須志田とくに論文発表などでは、ヒートマップと呼ばれる可視化グラフを活用するなど、ビジュアル面にもこだわってもらっています。
川村技術者なら当たり前ですが、図の下にタイトルを入れるとか、表の上にタイトルを付けるとか、そのようなルールがあることにも慣れてもらう必要があります。ただ、そういった基本ルールが未定着なまま入学してくる学生も少なくないので、レポートの書き方指導はとくに念入りに行っています。誰もがとても熱心なのでぐんぐんと力をつけています。
須志田私は他大学から移ってきたばかりなのですが、ここ数年の学生たちの希望進路は、どのようなものになっているのでしょうか?
川村大学進学と就職で半々です。昨年度は4:6で就職する学生のほうが多かったです。進学方面では情報系の学部・学科が大半を占めていました。情報工学科で学んだことを基礎として、プログラミングを学び続ける学生が多かったです。
一方、就職面では大きく2つに分かれます。いわゆるプログラマーやシステムエンジニア(SE)といった分野に進む学生が約半分。もう半分は、ネットワークや既存の機器の保守・運用分野に進んでいます。在学中に『全国高等専門学校プログラミングコンテスト』(全国高専プロコン)に参加し、プログラミングの世界にのめり込む学生も少なくありません。
須志田プログラミングの授業に限って言いますと、実際のところ指示書に従って作成していく内容になります。ただこれがものすごく好評で、普段の授業よりも時間をかけ、集中して取り組んでもらっていることもあり、学生たちの表情は皆、とても楽しそうですね。
川村高専の5年間は、高校の3年間とは大きく異なるものです。私は昨年度まで3年生からの持ち上がりでずっと担任を務めていたので実感できるのですが、一般的には大学受験に労力を費やす時期に、自ら選んだ専門の分野に打ち込めるというのは、とても楽しいことなのです。昨年に5年生の担任をしてとくに感じたのですが、彼らは学校の授業だけではなく、自分で面白いと思ったことをどんどんネットで調べて、それをプログラミングして楽しんでいたりするのです。
須志田そういうところは確かにありますね。
川村もちろん学生のタイプにより異なりますが、より深く、より広くというように、自分の興味ある分野をとことん掘り下げていくことができるのです。これもまた本学の魅力の1つです。
須志田中学生の皆さんは自分の将来像がまだぼんやりとしているかもしれないですが、例えば「プログラミングを学びたい」など、具体的に“やってみたいこと”を持っている学生に入学してほしいですね。単純に「携帯アプリを作りたい」でもいいのです。肝心なのは、何かやりたいことがあって、それに向かってサレジオ高専を選んでほしいというところ。そこに対し私たちは可能な限りサポートできる態勢を整えて、臨みたいと思っています。
川村私はやはり、チャレンジ精神のある学生に入ってほしいですね。学生時代に失敗しても何も問題はないのです。世の中の成功者の多くは、失敗によって得たことを成功の原点としているので、失敗を恐れずにどんどんチャレンジしてもらいたいと思っています。ちなみに、サレジオ高専は男女共学校です。まだまだ男子が圧倒的に多いですが、チャレンジ精神にあふれる女子の入学も待っています。
須志田そうですね。学校説明会や体験入学・受験相談会に参加していただき、実際にどんな学生がいるのかを見てもらうと、きっと「自分と一緒だな」ということがよくわかると思います。
情報工学の基礎科目や、実験・実習や、創造的プログラミング演習を重点的に取り入れるとともに、さまざまな応用知識の科目を導入しています。
情報工学科では国家資格である情報処理技術者試験をメインに各種資格試験のバックアップのための特別講座などを用意して学生の資格取得を応援しています。
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