地震などの自然災害に備え、防災グッズを倉庫に備蓄しています。
防災グッズを手にする高2生。
コンパクトに収納できる「たためるヘルメット」は軽くて丈夫。
エレベーターに設置されたボックスの中には簡易トイレと、周りを気にせずにトイレを使用できるポンチョが入っています。
AED講習会には約20名の先生方が集まりました。その眼差しは真剣です。
AEDが届いたら心臓マッサージをほかの人に代わってもらい、AEDの電源をON。電極バッドを傷病者の右の鎖骨のあたりと左の脇腹の2カ所に貼ると、AEDが自動的に心電図を解析。
「生徒が安心して学校生活を送れるように、本校では地震などの自然災害に備えて、防災グッズを倉庫に備蓄しています。また、教員たちは事故や災害から生徒を守るために、いつでも迅速に行動できることをめざしています」
(教頭/加藤信也先生)
防災グッズは、駐輪場と体育館にある倉庫に分けて収納されています。その内訳は大成高等学校の生徒と教職員合わせて1,600名が3日間過ごせる非常食と飲料水、さらにはタオル、軍手、簡易トイレ、マスク、レスキューシート、寝袋など。非常食と飲料水の保存期間は約6年間。そのため、これらは生徒が卒業する際に自宅へ持ち帰るそうです。
また、校舎のエレベーターには地震で停止したときのことを考えて簡易トイレを設置。教室のロッカーには同じく地震に備え、折りたたみ式のヘルメットが生徒一人につき1個収納されています。
2020年1月15日の放課後、先生方を対象とするAED講習会が開かれました。指導にあたったのは、地元消防署の所員です。
AEDは「自動体外式除細動器」のこと。駅や飛行場、劇場などに設置された小型の医療器械で、突然、心停止を起こして倒れた人の命を、その場に居合わせた人たちが使って救うことができます。AEDは傷病者の胸の上に貼られた電極パッドから自動的に心臓の状態を判断。もし心臓が血液を全身に送ることができない状態であれば、強い電流を流して心臓にショックを与えることで、心臓の状態を正常に戻す機能があります。大成にはこのAEDが8台備えられているそうです。この講習会の目的は、いざというとき、先生方がこれらを使いこなして応急手当ができるようにすることです。
会場となった教室には、練習用のAEDと人形がいくつか置かれていました。人形は傷病者の代わりです。講習の開始にあたり、地元消防署の所員が次のように述べました。
「心筋梗塞になったり、強い衝撃でボールが胸に当たったりした人がいた場合、救急車を呼んでも到着まで7分から8分はかかります。この間に何もしなければ蘇生率が下がってしまいます。しかし、心臓マッサージとAEDによって命が助かる可能性が高くなるのです」
いよいよグループに分かれて練習へ。まず、安全を確認してから人形=傷病者に近づきます。傷病者の肩をたたきながら「わかりますか?」と3回呼びかけて、反応がなければ周囲の人たちに助けを求めます。一人に「救急車を呼んでください」、もう一人に「AEDを持ってきてください」と依頼するのです。
「学校の場合、大勢の先生方がいます。きちんと伝わるように『○○先生』と名前で呼び、指でさして頼んでください」と所員がアドバイスをします。そうでないと「きっと誰かほかの人が救急車を呼んでいるはずだ」と思い込んで、実際は誰も呼んでいないというような状況になるからです。
次に傷病者の口に耳を近づけて、呼吸をしているか10秒間確認。呼吸をしていなければ、AEDが到着するまで心臓マッサージを施します。胸の中心にある硬い胸骨に手を重ねて1分間に100回から120回圧迫するのです。押す深さは5センチほどです。
「このとき、無理に人工呼吸をしなくてもかまいせん。嘔吐物があった場合、感染の危険があるからです」(所員)
AEDが届いたら心臓マッサージをほかの人に代わってもらい、AEDの電源を入れ、入っている電極バッドを傷病者の右の鎖骨のあたりと左の脇腹の2カ所に貼ります。するとAEDが自動的に心電図を解析。2分後に電気ショックの必要性を判断して音声で指示します。必要な場合は傷病者から離れて、ショックボタンを押します。先生方は、この練習を心臓マッサージとともに施してAEDを操作する役、救急車を呼ぶ役、AEDを持ってくる役の順にローテーションして行いました。
AED講習会が開催された2020年1月15日は、25年前に阪神淡路大震災が発生した1月17日を目の前にした日です。それだけに先生方は真剣に取り組んでいました。
「これからも、防災のための講習会を定期的に開き、教員たちの防災意識を高めていきたいと考えています」と話す加藤先生は、アメリカ心臓協会のBLS(Basic Life Support:一次救命処置)プロバイダーを取得しています。
この学校の掲載記事をピックアップしました。