井上円了博士は「諸学の基礎は哲学にあり」の精神を基として、東洋大学京北高等学校の前身となる京北尋常中学を創設しました。この精神を受け継ぎ、東洋大学京北では「より良く生きる」をテーマに哲学教育を行っています。多様な経験と自由な思索を通して、自己の人生観や価値観を陶冶することが目的です。その哲学教育の一つに「哲学ゼミ」があります。実体験から生まれる意見と自由な発想で1年間をかけて思索を深める少人数制の講座です。
東日本大震災の被災地となった岩手県大槌町を訪れたり、沖縄県の各地を巡って沖縄戦と基地問題を考えたり、乳幼児遺棄問題について学習を重ねた上で熊本にある慈恵病院の「赤ちゃんポスト」を見学したり……。これまで「哲学ゼミ」は、毎年テーマを変えて土曜日と夏休みに開講されてきました。
2018年は、「人と自然の共生」をテーマに学習。佐渡で自炊しながら棚田を観察したり、漁師の方の仕事を体験したり、地元の高校生と交流したりしました。
そして2019年に5回目を迎えた「哲学ゼミ」では、アイヌの人々について学んでいます。前期にはアイヌを取り上げたテレビ番組などを見て事前学習を積み上げていきました。そして、夏休みに北海道札幌市と平取町を訪問。3泊4日の合宿を実施したのです。