新年度の探究活動の幕開けとなる「探究開き」。高校1・2年生が合同で参加し、1年生は探究の第一歩を、2年生は個人研究の準備をスタートさせました。先輩たちの自由で多彩な研究テーマに触れた1年生は、大いに刺激を受けた様子。最後には3年生も加わり、2年間の成果を共有しました。学年を越えてバトンをつなぐ、足立学園らしい熱気に満ちた時間となったようです。
新年度の探究活動の幕開けとなる「探究開き」。高校1・2年生が合同で参加し、1年生は探究の第一歩を、2年生は個人研究の準備をスタートさせました。先輩たちの自由で多彩な研究テーマに触れた1年生は、大いに刺激を受けた様子。最後には3年生も加わり、2年間の成果を共有しました。学年を越えてバトンをつなぐ、足立学園らしい熱気に満ちた時間となったようです。
西巻洋太先生(国語科)足立学園に探究コースが設立されたのは2018年。大学入試改革や共通テストの導入を見据え、これからの受験や社会で生きる力を育てるためにスタートしました。同校では従来から、単に知識を身につけるだけでなく、生徒自身が問いを立てて考え、社会と関わる学びを大切にしてきました。その教育方針をより深く、実践的な形にしたのが探究コースです。
「探究コースは、幅広い教養を身につけながら、東京大学をはじめとする難関国公立大学への進学をめざすコースです。設立当時は、センター試験から共通テストへの移行期でした。そのため、知識の習得にとどまらず、思考力や表現力など“国公立大学の受験に対応できる力”を育てるカリキュラムを構築しています。その特徴の一つが、高校1・2年次には文系・理系に分かれず、すべての分野を幅広く学んでいく点にあります」(国語科・西巻洋太先生)
当時はまだ総合型選抜が一般的ではない時代でしたが、最近では探究活動での経験や研究内容を活かし、この入試方式で進学する生徒も増えています。
「ただし、私たちが大切にしているのは進学実績そのものではありません。“どこに進学するか”より、“どんな人になるか”です。高校時代に、自分で問いを立てて考え、人と関わりながら学ぶ経験を積んでほしいと思っています」(西巻先生)
探究コースの根底にあるのは、目先の進学先だけではない、その先の人生も自ら学び続けていける姿勢を育てるという強い想いなのです。
探究コースでは、「課題探究」を中心に週2時間の探究活動を行っています。高校1年次は、グループ探究がメインです。仲間と共に問いの立て方や調査方法、発表の基礎を学びます。高校2年次からはゼミ形式へと移行。少人数でそれぞれのテーマを深く研究します。論文の読み方やリサーチ手法も専門的に学び、大学での学びへとつながる強固な基礎を身につけていきます。
教室内だけの活動にとどまらない点も、探究コースの大きな特徴です。昨年度よりフィールドワークの機会をさらに拡大。生徒たちは自ら学校の外へと飛び出し、多様な人や地域、大学などと関わりながら、リアルな社会のなかで学びを深めています。
「外の世界に触れることで、生徒の視野は一気に広がります。教室内では気づかなかった発見が、自分自身の『問い』へと変わっていくのです。テーマは最初から完璧でなくてかまいません。リサーチや対話、試行錯誤を繰り返しながら、自分自身の興味と社会とのつながりを手探りで見いだしていきます。ここで得られるのは、知識だけではありません。伝える力、行動する力、そして答えのない問いに挑み続ける姿勢。それこそが、彼らの生涯の財産になります」(西巻洋太先生)
今でこそ活気あふれる探究コースですが、立ち上げ当初は先生方にとっても手探りの連続でした。特に1期生の時代は、生徒から「なぜこれを学ぶのか」「何のために取り組むのか」といった本質的な問いが次々と投げかけられました。当時は、それらの問いに対して十分な答えを返しきれず、もどかしさを感じることも多かったと言います。
「探究を通して、受験科目の枠にとらわれない多面的な視点に触れてほしい。生徒たちが『なぜ学ぶのか』を自ら考え、学びそのものの楽しさや意義を実感できるようにしたいと、私たちは試行錯誤を続けてきました」(西巻先生)
こうした熱意あるアプローチを重ねるなかで、生徒たちに確かな変化が現れ始めました。今では、「これを学びたい」「この分野に挑戦したい」と、自分の言葉で進路や興味・関心をイキイキと話す生徒が目に見えて増えていると言います。
「探究テーマは、あえて狭く限定していません。例えば、バスケットボール部の生徒が『バスケットシューズの機能性』を研究したり、数学好きな生徒が自らの興味から『数理的な探究』に取り組んだりしています。ほかにも『色鉛筆の成分分析』や『ババ抜きの確率』、さらには『催眠術を用いた学習法』など、テーマは一見ばらばらです。しかし、その背景には必ず、生徒一人ひとりの『なぜだろう』『もっと知りたい』というピュアな好奇心があります。探究において、テーマの正しさは重要ではありません。生徒自身がどれだけ本気になれるか、私たちはそこを一番大切にしています」(西巻先生)
自由度の高い環境だからこそ、生徒たちの多様な好奇心がのびのびと育まれています。それを支えているのが、足立学園ならではの温かい校風です。
「探究コースには、自ら挑戦し、主体的に学校生活を楽しむ生徒が集まっています。運動部で活躍する生徒、生徒会や文化活動に熱中する生徒、特定の分野を深く掘り下げる生徒など、活躍の形はさまざまです。しかし、そこには互いの個性や価値観を尊重し合う風土が根付いています。『好きなことを好きと言える』『自分を無理に変えなくていい』という安心感があるからこそ、生徒たちは探究にも前向きに挑戦できるのです」(西巻先生)
答えを与えられるのではなく、自ら問い、考え、行動する。足立学園の探究コースは、このかけがえのない経験を通して、生徒たちが自らの未来を切り拓くための強固な土台を育んでいます。
Kさん(高3)高1の3学期にオーストラリアへターム留学をしました。その経験をもとに、高2の4月からは「学校をどう国際化できるか」というテーマで個人探究をスタートさせました。
当初は、留学先のように「さまざまな背景や人種の人たちが集まる環境を作ること」こそが国際化だと思っていました。しかし、留学生を積極的に受け入れている他校を訪問したり、学外の多様な人たちにインタビューを重ねたりするなかで、自分の考え方が少しずつ変わり始めました。
そんな私に意外な発見をくれたのが、母校の小学校でした。生徒たちがとても楽しそうに英語を学んでいる姿を見て、ハッとさせられたんです。国際化とは、環境や制度といった外側を整えることだけではありません。「コミュニケーションを取ろうとする姿勢」や「相手を知りたいと思う好奇心」こそが本質なのではないか、と感じました。
探究を始める前、自分にとっての国際化は「海外」や「英語」という華やかなイメージだけでした。しかし、実際に足を運んで調べてみると、単に多様な人を集めるだけでは足りません。もっと内面的な部分、つまり「一人ひとりの意識」を変えていくことこそが必要なのだと気づきました。身近な日常のなかにも、課題や工夫できることがたくさん隠れていました。
探究コースの学びは、“調べて終わり”ではありません。自分たちの考えをまとめ、相手に伝える機会が数多く用意されています。
活動を通じて痛感したのは、「自分では伝わると思っていても、そのままでは相手に届かない」という難しさでした。この経験をきっかけに、どうすれば自分の意図が的確に相手へ伝わるのかを、真剣に考えるようになりました。
探究コースでは、クラスメートと意見交換をしたり、お互いの発表を聞いたりする機会が豊富にあります。自分とは異なるテーマや多様な考え方に触れるたび、知識や視野がぐっと広がっていくのを感じました。
私は中学からの内部進学ですが、高校から新しく入ってきた同級生たちは、みんな自立心が高くて驚かされます。そんな彼らの意欲的な姿勢からも、日々大きな刺激を受けています。
探究コースには、それぞれ異なる興味や価値観をもった仲間が集まっています。しかし、その違いを否定する人は誰もいません。お互いに『そういう考え方もあるんだね』と認め合える、心地よい雰囲気がクラス全体にあります。
自分の好きなことをトコトン深めながら、周りからも刺激を受けて一緒に成長していける。それこそが、このコースの一番の魅力だと思います。
Tさん(高3)探究の原点は、高1で参加した「アフリカ・スタディツアー」です。現地でタンザニアの教育やリアルな暮らしに直接触れたことで、それまでの常識が覆されました。「本当に求められている教育支援とは一体何だろう」と、自分自身の頭で深く考えるようになったのが全てのきっかけです。
ツアーに参加する前は、タンザニアや発展途上国の教育に対して、どこか漠然としたイメージしかもっていませんでした。しかし現地に足を運ぶと、日本とは全く異なる環境のなかでも、一人ひとりが前向きに学び、たくましく生活している姿に強く心を動かされました。
当初は「日本と比べて何が足りないか」という欠乏している部分ばかりに目を奪われていました。しかし、現地の人々と共に過ごし、対話を重ねるうちに、環境の優劣を比べる意味はないと気づきました。本当に大切なのは、その環境のなかで彼らが「どう学び、どう考えているのか」という内面の本質を見つめることなのだ、と教えられました。
帰国後は、現地での経験をもとにタンザニアの教育についての探究を本格化させました。文献を読むだけでなく、京都大学や広島大学の教授陣へ直接取材を敢行し、専門的な視点を取り入れながらテーマを深めていきました。
当初は「もっと知りたい」という純粋な好奇心から始まった活動でした。しかし、リサーチを重ねて多くの人と対話するなかで、自分の知識だけでは見えていなかった世界の広さを痛感しました。実際に足を運んで生の声を聞くたびに、新しい興味の種が芽生え、そこからまた次の問いが生まれていく。そんな心地よい学びの連鎖を実感しています。
探究コースの仲間に共通しているのは、誰もが自分なりの「高い志」をもっていることです。だからこそ、たとえ興味や考え方が違っていても否定する人は誰もいません。お互いに『そういう視点もあるんだね』と自然に認め合える、温かい雰囲気がいつも教室にあります。
仲間の発表や日々の活動から刺激を受ける機会も多く、自分一人では決して気づけなかった多角的な視点や考え方に、たくさん出会うことができました。
探究活動を通して学んだのは、自分のテーマを深める技術だけではありません。自ら動き、多様な人と関わりながら、考え続けることの大切さを身をもって知りました。
大学へ進学してからも、新しい環境や人との出会いを大切にしていきます。そして、常に自分なりの「問い」を胸に抱きながら、主体的に学び続けていきたいです。
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