芝浦工業大学との高大連携を活かし、「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という建学の精神を実践する同校。その象徴となるのが、創造力と技術力を横断的に育む探究型プログラム「Arts and Tech」です。今回はプログラムを担当する山岡佳代先生に、その狙いをインタビュー。さらに、高3生3人に、これまでの挑戦や将来への想いを語ってもらいました。
芝浦工業大学との高大連携を活かし、「社会に学び、社会に貢献する技術者の育成」という建学の精神を実践する同校。その象徴となるのが、創造力と技術力を横断的に育む探究型プログラム「Arts and Tech」です。今回はプログラムを担当する山岡佳代先生に、その狙いをインタビュー。さらに、高3生3人に、これまでの挑戦や将来への想いを語ってもらいました。
山岡佳代先生(美術科)山岡先生高校からの入学生を対象にした、高大連携プログラムです。芝浦工業大学の教授や大学生・大学院生にサポートしてもらいながら、実践的に工学や研究に触れ、自分の進路を具体化していきます。
高1では「ものづくり」をテーマに、ロボット製作などを通して工学の面白さを体感します。高2のテーマは「ことづくり」です。最先端の研究に触れることで、自分の視野を大きく広げます。そして高3では、興味のある専攻分野を深め、理工系大学での学びに直結する研究へと発展させていきます。
教授だけでなく、年齢の近い学生たちと深く交流できるのも、このプログラムの魅力です。大学生活や研究の具体的な話を聞く機会は、生徒たちの将来にとって貴重な財産になっています。また、本校の教員も授業に関わり、生徒の研究意欲を高めています。
Sさん(高3)Sさん私は建築に興味があったので、入学前からこのプログラムをとても楽しみにしていました。
実際に始まった高1の授業は、手を動かして学ぶ体験が多くて、毎回ワクワクしたのを覚えています。自分の手で作り上げる達成感を知り、「将来はこういう分野に進みたい」と具体的に考えるきっかけになりました。また、教授の方々が「ご自身の研究をどのように将来の仕事につなげていったのか」を直接話してくださったことも、自分の進路を選ぶうえでとても参考になりました。
Oさん私も建築に興味があったので、建築学部で学ぶような専門的な授業を高校生のうちから受けられることに、とても魅力を感じていました。授業はどれも新鮮で、興味深いものばかりでした。特に、大学で行われている最先端の研究や技術が、実際に社会課題を解決し、人々の生活を支えていると知った時は衝撃を受けました。単に知識を「学ぶ」だけでなく、その学びがどう社会貢献につながるのかを実感できたことで、「自分も将来、社会の役に立つものづくりに関わりたい」という想いがいっそう強くなりました。
Yさん私も入学前から「Arts and Tech」を楽しみにしていましたが、この学校を選ぶ一番の決め手になったのは、文化祭で見学した「電子技術研究部」です。「ここで活動したい!」と強く思いました。実際に、校舎や設備がとても充実しているので、自分のやりたいことに本格的に挑戦できる環境が整っています。3年間を振り返ると、「Arts and Tech」の授業で学んだことを部活動に活かせる場面がたくさんありました。逆に、部活動で身につけた知識や技術を授業で活用できることもあり、日々の学びが全て一本の線でつながっている楽しさを実感しています。
Sさん一番印象に残っているのは、高1で取り組んだ「パスタブリッジ」の授業です。乾麺のパスタだけを使って、どれだけ丈夫な橋を作れるかという課題でした。ただ感覚で作るのではなく、PCで強度のシミュレーションを重ねながら、理想の構造を突き詰めていきました。建築に興味があった私にとって、これ以上ないほど面白い授業でした。この経験をしてから、視野が大きく広がりました。今では街を歩いていても、周囲の建物を見上げながら「どうすれば地震に強い構造になるのだろう」と、自然に考えるようになっています。
Oさん(高3)Oさん高2で受けた「感性工学」の授業が、今でも強く印象に残っています。人の感性や潜在的なニーズに着目し、数値化しにくい「心地よさ」までを計算してデザインを考えるという内容が、とても新鮮で驚きの連続でした。この授業を通して、私の建築への視点も大きく変わりました。ただ建物を建てるだけでなく、その地域の魅力を最大限に引き出し、自然と「人が集まるような空間づくり」に将来関わりたいという想いが、いっそう強くなりました。
Yさん私は「ライントレースロボット」の製作授業が、今でも強く印象に残っています。実はそれまで、プログラミングに対して「難しそう」という苦手意識をもっていました。でも、試行錯誤しながら作ったロボットが実際に動いた瞬間、「自分にもできるんだ!」と大きな自信を得ることができました。その成功体験が、今の活動の原動力になっています。今では、AIを活用したオリジナルのアプリ開発に挑戦するまでになりました。さらに所属している電子技術研究部でも、AIを使ったメルマガ作成や、部の業務効率化といった実践的な取り組みに励んでいます。
Sさん高2で取り組んだ「高齢者体験」の授業がとても印象に残っています。実際に装具をつけて体の不自由さを体験したことで、社会には多様な立場の人が暮らしているのだと、身をもって実感しました。そのとき担当の先生が、“社会的に不利な立場にある人のためのデザイン”を重視して研究されているお話を聞き、深く感銘を受けました。その教えは今も大切にしています。私も将来、ただ美しいものを作るだけでなく、“誰かの暮らしを支えられるデザインやものづくり”に関わりたいという目標ができました。
Oさん「パスタブリッジ」の授業では、シミュレーションなどの最新技術を駆使して、効率的で壊れにくい構造を徹底的に考えました。実は、AIなどの新技術に対して、最初は少し不安もありました。でも、授業を通して「未知のテクノロジーを怖がる必要はない。うまく活用すれば、より良いものが生まれるんだ」という前向きなマインドを学ぶことができました。
Yさん(高3)Yさん教授がAR・VRの研究を、日常のちょっとした場面にも応用しているのを見た時に、大きな衝撃を受けました。それまでは技術に対して少し硬いイメージをもっていたのですが、「技術って、もっと自由に使っていいんだ」と視野が開けたんです。社会課題の解決だけでなく、自分自身が楽しいと思えることに技術を活かしていいのだという自由な考え方が、今でも心に残っています。
Sさん高1の時に、Oさんたちと4人チームで「SBMC Junior」(※1)というコンテストに挑戦したことが心に残っています。私たちは「雨の日でも憂鬱にならない傘」をテーマに選びました。「傘の構造は昔からあまり進化していない」と考え、雨をはじくのではなく、お風呂マットに使われる珪藻土で“吸収する”というアイデアを提案したんです。実現は簡単ではありませんでしたが、新しいものを生み出す楽しさを改めて実感しました。
また、このプログラムは自分で考えたことを形にして発表する機会が多いため、アウトプットする力も身につきました。こうした経験から「もっと広い世界に触れたい」という思いが強くなり、高1の夏にはニュージーランド、高2の春にはインドの最先端プログラムにも挑戦。どんどん視野を広げることができています。
Oさん「SusHi Tech」(※1)のボランティアに参加したことが心に残っています。高校生が招待されるのは初の試みで、周囲は大学生ばかり。最初は少し不安もありました。でも、事前の打ち合わせで大学生の先輩方が「大丈夫だよ」と温かく声をかけてくださり、安心して参加することができました。現地ではチケットの読み取りやブース設営を手伝いました。それだけでなく、世界最先端の技術や、それを社会に活かそうと情熱を注ぐ人たちを間近で見られたことが、私にとって何より大きな刺激になりました。「Arts & Tech」の授業を受けていたからこそ、会場の技術の価値や面白さが深く理解できたのだと思います。最前線で実際に行動している人たちの姿を見て、「夢を実現するためには、まず一歩を踏み出すことが何よりも大切なんだ」と実感しました。
Yさん芝浦工業大学には、中高生向けの「SBMC Junior」(※2)など、アイデアや技術を社会に活かすコンテストの機会が多く、私は高1から毎年挑戦してきました。高3の時は、東京都主催のスタートアップ・ピッチコンテスト「SusHi Tech Challenge 2026」にも挑戦し、セミファイナルまで進むことができたのは大きな自信になりました。
現在は「光を使って人の行動を安全に誘導する技術」について研究しています。最近は自転車のルール改正などが話題ですが、罰則で縛るのではなく、デザインや技術を使って「楽しく安全に行動できる仕組み」を作れたらと思っています。こうして発表を重ねるうちに、人前で話す緊張もすっかりなくなりました。今では、スライドの見やすさはもちろん、資料の構成や、実際のビジネスを想定した収益計算まで意識できるようになり、自分の成長を実感しています。
(※1)Sustainable High City Tech(通称 SusHi Tech):持続可能な都市をHigh Technology で実現することをめざし、世界中からスタートアップや投資家・企業・大学などの支援者、成長を続ける企業などが東京に集まり、出会い、交流するイベント。2026年4月には、国内外のスタートアップや投資家が集まるアジア最大級のビジネスイベント『SusHi Tech Challenge 2026』が開催された。
(※2)芝浦工業大学が学生を対象に行っているビジネスコンペティションSBMC(Shibaura Business Model Competition)や、学内で実施している各種ワークショップのノウハウを活用した、中高生徒向けのアントレプレナーシップ教育に関する取り組み。現在、プログラムには芝浦工業大学柏中学高等学校、芝浦工業大学附属中学高等学校、昭和女子大学附属昭和中学校・高等学校、山脇学園中学校・高等学校、実践女子学園中学校高等学校の5校が参加している。
Sさん将来は、世界で活躍できる建築家になりたいと考えています。建築だけでなく、デザイン工学など幅広い分野を横断して学べたことで、物事を多角的に考える視点が身につきました。この学校には、理系分野でやりたいことをもっている仲間が多く、刺激を受けながら自分の目標もより明確になったと実感しています。目標をもつことで、そこに向かう方法も見えてくると思うので、これからも挑戦を続けていきたいです。
Oさん将来は、過疎化が進む地域の魅力や特性を活かして、多くの人が「行ってみたい」と思えるようなまちづくりに関わりたいと考えています。その実現のために、地域の人たちが大切にしている文化や想いをていねいに読み取り、寄り添える力をもっと身につけていきたいです。また、この学校でのさまざまな活動を通して、「自分がワクワクできることを追求する大切さ」にも気づかされました。周囲の意見を気にしすぎるのではなく、自分自身が心から面白いと思える感覚を、これからも大切にしていきたいです。
Yさん将来は、映像や光などの先端技術を活用して、人々が「楽しい」と感じられる形で社会課題を解決していきたいと考えています。現在はルールや罰則で行動を縛る場面も多いですが、そうではなく、楽しさを通して自然と安全な行動に繋げられるような仕組みを作ることができたら素敵だと思っています。また、これまでの部活動やビジネスコンテストの経験から、周囲に相談することや、確実な「報告・連絡・相談(ホウレンソウ)」がいかに重要であるかも身をもって学びました。技術を磨くことと同じくらいコミュニケーションも大切にしながら、社会に出てもこの姿勢を忘れずに挑戦を続けていきたいです。
山岡先生「Arts and Tech」は、生徒たちの進路選択やキャリア形成に大きく貢献する取り組みです。高大連携を通じて大学での学びを体感できるため、進学後のミスマッチが減るだけでなく、その先の留学や研究活動へのモチベーションにもつながっています。実際に、この授業をきっかけにビジネスコンテストへ挑戦したり、学外のボランティアへ踏み出したりする生徒が多く、自分の未来に向けて主体的に行動できるようになっています。
今後は、芝浦工業大学との連携をさらに深め、高校生でも安心して挑戦できる環境をいっそう整えていきます。「実際に作る」「発表する」「社会とつながる」というプロセスを、より手厚く支援していく方針です。生徒たちには、大学へ進学した後もここでの経験を土台にして、仲間と楽しみながら自分の学びを広げていってくれることを期待しています。
SさんとOさんが高1の時に4人チームで挑戦した「SBMC Junior」。「雨の日でも憂鬱にならない傘」をテーマにアイデアを提案しました。
SusHi Tech Tokyo でOさんボランティアとして参加。最先端の技術を目の当たりにして、大いに刺激を受けました。
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